ソウル発の旅客機は、成田を発つと給油のためにホノルル空港でトランジットです。入国審査は思いのほか厳しく感じられましたが、ハワイの暖かい空気は初めてのフライトに少々緊張ぎみの私をほぐしてくれました。
ロスの空港には、知人の社長さんに紹介された駐在員のAさんが待っていてくれました。Aさんは奥さんを日本に残して単身赴任、私より年上の30代半ばです。お互い挨拶を交わし、輪行袋と荷物を後部座席へ運び込みAさんの自宅へ向かいました。
「H君のことは社長から聞いているよ。自転車でアメリカ旅行だってね。すごいねぇ」 「いや、前から考えてはいたんですけど、いまがチャンスかなと思って」 「そう。まあ準備とかあるんだろうから、その間、俺の家でゆっくりするといい。一人だから気にすることないよ」
「ありがとうございます。折角のロスだからディズニーランドにも行こうと思っています。あと、こちらの印刷やデザインの現場も見てみたいんですけど、いいですかね?」 「いいよ。でも日本と一緒だと思うよ。ただきょうから3連休だから、来週連れて行くよ」 「無理言ってすいません。お願いします」
Aさんの自宅は、空港から数キロのロス郊外ランダウェルという住宅街にあり、私のために一部屋用意してくれていました。長いフライトの疲れでしょうか、その夜はぐっすりと眠りました。
北米を旅行中、この手帳に日々のできごとや感じたことを短かく記録していた。いま、この手帳を読むと、当時の光景がきのうのことのようによみがえる。