シアトルを発って2日目、ジェフの住むベリンハムの街へ到着。ジェフの家はライトブルーのペンキで塗られ、玄関・窓枠・屋根回りだけは白いペンキです。レンガ造りの煙突、庭付きの平屋建ては見るからにアメリカの家という感じです。前夜、電話で夕方までに着くと伝えています。すると、気配を感じて中から人が、
「はーい、ミスターH。ようこそ、わたしがジェフです」と出迎えてくれました。
私も握手をしながら挨拶をすると、彼は自転車ごと家の中に招き入れてくれました。
彼は私より少し年下でいかにもアメリカの好青年という感じです。ポーランド出身の奧さんフィルスと黒い犬一匹と暮らしています。
「まずはお風呂へどうぞ。バスタブの使い方はわかりますか?」
「はい、大丈夫です」
サイドバッグから着替えを取り出し浴室へ案内されると、バスタブの横にはスティック状のお香が焚かれていました。風呂から出て聞きました。
「お香をありがとう。よく焚くんですか?」
「ときどき。それに日本人には、そういう習慣があると聞いています」
「いや、生まれて初めての経験です」
私がそう答えると、ジェフはすこし驚いたようで、
「えっ、そうですか。てっきりそう思っていました。あっはは」
「でも、おかげでリラックスできました」
「とにかく食事の前にビールで乾杯です」
この一言で、彼が好きになりました。なんと言っても風呂上がりはビールです。
ノビュという呼び名
「ところで、ミスターH。何と呼んだらいいですか。ファーストネームは?」
私がローマ字で Nobu と書くと、彼は
「Nob じゃなくて Nobu ですね。Uがいるんですね」、そう確認すると、
「O.K. ノビュ。乾杯だ」
訂正するのも何か気が引けたので、私はそれ以後 Nobu(/nobyu/) と呼ばれていました。乾杯のあとは一気に打ちとけて会話することができました。