食後、私はあの質問をしました。
「ジェフ、聞きたいことがあるんだ。手紙に書いてあった、シスコからニューヨークまでの大陸横断レース、13日半って1日400㎞近く走ってる計算になるけど」
「あれか。あれはタンデム(2人乗り)だ。それに伴走車のサポートが付いている。俺たちはマッサージを受けて、食事と仮眠を取りながら走るだけだ」
「伴走付きのタンデムね。それで納得したよ。そうかタンデムか」
私の疑問が一瞬にして解けました。
「で、ノビュ、お前の方はここまでどうなんだ。順調だったのか?」
「手紙に書いてあった通り海岸線を走って来たけど、北からの季節風には、まいったよ」
「そうだ。いまの季節、弱い風が吹いている。だから俺がツーリングしたときもシアトルからシスコまで南下したよ。体力もかなり違うはずだ」
「やっぱりネ。北へ向かうサイクリストは、俺以外にいなかったもの。そうだ、カリフォルニアのハイウェイで CHIPs に捕まったよ。間違ってハイウェイを走ってネ」
ジェフは大笑いです。
「CHIPs に捕まるって、バカだなぁ。誰も市街地のハイウェイなんか自転車で走らないゾ」
「だから、間違ったんだって」
「それで食事はどうしてた。自炊か?」
「ああ、ちゃんと朝晩やってたよ。雨の日はテントが狭いから、中で炊事をするのは大変だよ。そうだ、2度も夜中にタヌキにパンを盗られて朝飯抜きだった。あれにはまいったよ」
「タヌキか。ヤツらはキャンプ場によく出てくるんだ。また出るかもな」
辞書を片手のやりとり
わからない言葉があると、私は辞書を持ち出して、彼に確認してもらいながら話しを続けました。それでも話しは尽きませんでした。
「ノビュ、もう遅いから寝よう。明日、明後日は土日で休みだ。どうしたいか遠慮しないで言ってくれ。付き合うよ」
「ありがとう、嬉しい。実は空気入れがつぶれて、なかなか空気が入らないで困っている。それとコンロのプレヒート用のメタを探している。もうひとつ、ノースカスケイド国立公園へ行きたいんだが、どうだろう」
「O.K. じゃあ、明日は自転車店とアウトドアショップへ行こう。あさってはナショナルパークだ。ノースカスケイドへは、フィルスとよくハイキングに行くんだ。まかせてくれ」
ベッドに横になると酒の酔いもあり、私は一気に眠りに落ちました。