「ジェフ。最近自転車はどうなの、乗ってるの?」
「もちろん、ツーリングもレースも両方やってる。フィルスもツーリングが好きだから、2人でよく行くよ。俺、近々レースに出るんだ。アマチュアのね」
「レースか、ジェフはすごいな。俺はノンビリ走るのが好きだから、レースなんか考えたこともない」
「いや、自転車で海外旅行だなんて、ノビュ、お前だって大したもんだよ。俺にはできないよ」
「本当か? ジェフ、本当にそう思ってるのか?」と、指をさして、からかうと、
彼は笑って、
「本当、本当だ。でも事故には気をつけてくれ、乱暴な運転をするヤツもいるし」
「うん、分かっている。事故には気をつけているつもりだ」
「俺の経験だと中央アメリカ、あの辺はハイウェイしか道がないから、結構交通量は多い。スピードも出してる。たまに自転車の事故もあるよ」
「へぇー。そうか、危ないんだ」
まじめに聞いていると、
今度は、ジェフが笑いながら私を指さして、
「でも、ハイウェイパトロールに捕まる心配はないよ、他に道がないからな。あと、一週間走っても、右も左もトウモロコシ畑だけだ。つまらないゾ。あっはは」
海外での自転車事故
サイクリストなら誰でも、横を走り抜けるトレーラーやダンプの風圧で、一瞬 “ヒャッ”とした経験があると思います。
風圧ではじかれて、その後吸い寄せられるというアレです。北米のトレーラーは、日本のそれよりはるかに大きく風圧も想像以上です。私もたびたび怖い思いをしました。
アメリカのハイウェイとはいえ、都市部を離れれば、一車線の道路が多くなります。うしろから車の轟音が聞こえ、反対車線から対向車がくる場合には、私はできる限り、舗装路から横のベアグランドの路側帯に逃げるようにしました。
しかし、事故はどんなに気をつけていても起こるものです。私が出発する前年には不幸な事故が起こりました。若い日本人サイクリスト2人が事故で亡くなりました。ひとりはトルコで、もうひとりの方はカナダで、トレーラーに巻き込まれました。残念なことです。