翌日は3人と1匹、車でノースカスケイド国立公園までハイキングに。片道約100㎞。愛犬はうしろの荷台で慣れたようすで、おとなしくしています。
ジェフの話しではこの国立公園がアメリカでは登山家やハイカーに一番人気があるそうです。ジェフたちがよく行くハイキングコースを案内してもらいました。
山々には氷河、緑濃い樹々、水量ゆたかな川、点在する湖。半日のあいだタップリと大自然を満喫できました。
ビールを飲みながらの夕食は例によって賑やかです。私が辞書を持ち出すと、少々酔っ払ったジェフは冗談まじりに
「また辞書か。ノビュ、もういい加減にしてくれ」
そんなとき、電話がかかってきました。電話に出た彼は、私に代わるように言っています。どうやらパウラ先生のようです。
「もしもし、Hです」
「はい。パウラです。Hさん、どうです。楽しんでいますか?」
「ええ、きょうは国立公園へハイキングへ行ってきました。すこし疲れましたけど最高でした」
「欲しかったものは手に入りましたか?」
「はい、ジェフのおかげで全部揃えることができました。パーフェクトです」
「それは、よかったです。いま、私はプレゼントされたお酒を友だちと飲んでいます。とてもおいしいですよ」
“Paula, do you love it?”
“Yes, I love it.”
「ライクよりもっと好きな表現をする場合はラブを使うと、授業でパウラが教えてくれたんです」
「そうでした。よく覚えていましたね」
「もちろんです。じゃあ、乾杯!」
電話の向こうで、パウラ先生は笑っていました。どうやら、私も少し酔っ払ったようでした。
Take It Easy
出発の朝、小雨が降っていました。ジェフはわたしの身体中に防水スプレーを吹き掛けると、記念だといってピンク地に前からうしろへ赤い1本のラインの入ったサイクルキャップをくれました。
「いいね、このキャップ。これからずっと被って行くよ。ジェフ、フィルス、2人ともいろいろありがとう。本当に楽しい3日間だった。じゃあ、行くよ」
“Nobu, take it easy. ”
「うん、テイクイットイージーだな」
サドルにまたがりながら、
「ジェフ、レースがんばれよ。どっかの国から絵はがきを送るよ」
”O.K. Take it easy! ”
カナダとの国境まで40㎞、バンクーバーまでは90㎞。きょう中にはカナダです。もうすぐロッキーです。