ミズーラからはインターステイト・ハイウェイ90号線、そして、リビングストンからは U.S.ハイウェイ89号線とアップ・ダウンを繰り返しながら山のなかを走ること5日間。
イエローストーン国立公園
ロッキー山脈の最終目的地、ワイオミング州イエローストーン国立公園に到着しました。しかし、例によって公園内のキャンプ場は満員です。いったん町に戻り、翌日出直すことに。
イエローストーン国立公園はモンタナ州とアイダホ州に一部含まれますが、その大部分はワイオミング州にあります。入口は東西南北と北東の合わせて5ヵ所です。北のゲートから入り、数キロ進むとビジターセーターがあります。
私はそこで公園内の地図をもらい、プランを立てることに。公園内には南北に8の字に道が通っています。グランドキャニオン(大渓谷)、オールドフェイスフルの間欠泉、そしてイエローストーン湖の3ヵ所をメインに、逆Sの字に回ることにしました。
Dunraven pass(2706m)を越え、ホッとして休憩していると、一人のサイクリストがやってきました。
ウィルフレッドと出会う
ニューヨークから走ってきたスイス人、名前はウィルフレッドといいます。お互いの目的地など話すと、彼はスイスに行く予定ならと自分と行きつけの自転車店のアドレスを教えてくれました。
彼はアメリカを走った後は、南半球のニュージーランドとオーストラリアへ渡り、来年7月に帰る予定だということです。
[翌年6月末、キャリアの再溶接やタイヤとトウ・クリップの購入のために、ウィルフレッドが紹介してくれた自転車店を訪ねると、店主のウォルターはすべて無料で応じてくれました。ウィルフレッド本人はまだオーストラリアを旅行中で帰国していませんでした。
ただ、自転車店の隣に彼の姉さん夫婦が住んでおり、バーベキュー・パーティーやライン・フォールへの観光などで私を歓迎してくれました。ウィルフレッドとの出会いは感謝すべきものでした]
イエローストーン大渓谷
ウィルフレッドと別れ、しばらく行くと、最初の目的地イエローストーン大渓谷が見えてきました。ビューポイントには大勢の観光客が。名前の由来になったといわれる黄色い岩肌、はるか眼下300mを流れるイエローストーン川、30kmにもおよぶ渓谷のスケールの大きさを感じます。
トレイルから Upper Falls に降りてみました。滝の高さこそ30mほどですが、滝壺に落ちる水量はものすごく、下から見上げる渓谷とともに迫力満点でした。来た道を戻り、89号線をしばらく走り、混雑を避けるためにこの日も早めにキャンプ場に入りました。
道端の湯気のなかに指を入れてみると、「アチッ」、想像以上の熱さに驚きました。周辺の至るところに湯だまりが見えます。小さな泉や流れる川からも湯気がたっています。そんな温泉地帯に the Old Faithful Geyser (オールドフェイスフル間欠泉)があります。ちなみに faithful は〈忠実な〉と言う意味で時間どおり(64分に1回)吹き上がる間欠泉をさしています。
私が昼食のハンバーガーをパクついている間に吹き上がってしまいました。管理事務所の掲示板に次回は1時40分と。私は40分も前ですが、間欠泉を半円状に取り囲むスタンドの最前列に座って待つことにしました。時間が近づくにつれ、続々と人が集まり、数百人にもなりました。
時間どおり間欠泉が上がると同時に「オーッ」と大きな歓声があがりました。高さ30-40m、約30秒間、なかなかの迫力です。短いイベントが終わると、この日も早めにキャンプ場へ。ハイカーとバイカーの専用サイトがあり、料金は1$。こうあってほしいものです。
イエローストーン湖に向かう途中、標高2518m地点に Continental Divide(大陸分水嶺)がありました。案内板には「湧水は左右に別れ、それぞれ太平洋と大西洋へ注ぎます」と説明があります。イエローストーン川もミズーリ川と合流し、やがてミシシッピー川からメキシコ湾へ注ぎ込みます。その距離は数千キロにもなります。
イエローストーン湖は琵琶湖の半分位の大きさですが、カルデラ湖としては大きい湖です。湖を右手に見ながら、ロッキーを走った3週間の最後を惜しむようにゆっくり走りました。レイク・クルージングを楽しむ沢山のボート。だいぶ視界も開けてきて、湖畔をわたる風も気持ちよく感じられます。湖を過ぎると一気に下る豪快なダウンヒルです。いつもなら楽しい下りですが、なんとなく寂しさを感じていました。
最近、気になるニュースがあります。温暖化の影響でロッキーの氷河が年々後退しており、数十年後にはすべてなくなるだろうといわれています。また、私が訪ねた年のグレイシャー国立公園ビジターセンターの公園新聞には、グリズリーの目撃情報が50件近く載っていました。現在、グリズリーをはじめとする野性動物の数も減っているようです。周辺環境の変化でしょうか、残念です。