9月下旬、ニューヨーク州の秋の訪れは東京より早いようで、U.S. ハイウェイ20号線沿いの木々はすでに色づいています。日中の気温もあまり上がらず、短パンからニッカーボッカーに替えて走りました。ここ2-3日アパラチア山脈のアップダウンが続いています。
この日、ニューヨーク州の州都 Albany の街に到着しました。「ニューヨーク州の州都はどこ?」と尋ねられて、すぐにオルバニーと答えられる日本人は少ないと思います。私自身もこの街に着くまでは知りませんでした。
アメリカでは多くの州で、州都である行政都市を経済都市と切り離して地方の小さな街に置くようです。ここオルバニーも歴史のある街のようですが、人口は10万人足らずです。
一緒に走った2週間は楽しいことばかりでしたが、K君とはこの街でお別れです。ハドソン川沿いのハイウェイまで見送りました。川沿いを南に260㎞ほど走れば、ニューヨークです。(帰国後、K君は夜勤の守衛のバイトで旅費を貯めて、再び海外自転車旅行へ出ました)
オルバニーには、19世紀末に建てられた州庁舎などを始めとして古い建造物が多くあります。一方で、ハイウェイの近くには高層ビルを中心とした、さまざまな近代的施設エンパイア・ステート・プラザがあり、新旧の建築物が混在していました。
この日は深夜から降りだした突然の大雨でテントの中もぐしょぐしょになり、ろくに寝られませんでした。そのためでしょうか、体調がすぐれず少々熱っぽいようで、早めに Y.M.C.A. にチェックインして休養にあてることにしました。
ボストン観光
幸いにも体調はすぐに戻りました。オルバニーを出発してから3日目、到着したボストン市内で渋滞に巻き込まれてしまいました。金曜日の夕方、道路は多くの車であふれています。ニューヨーク州と違ってマサチューセッツ州のボストンは州都でもあります。昼と夜の人口の増減は2倍だそうで、いきなりその洗礼を受けてしまいました。
ニューイングランド地方を代表する街ボストンは、後のアメリカ独立戦争のきっかけとなった、英国兵士と民間人の紛争〈ボストン虐殺事件〉や教科書で習った〈ボストン茶会事件〉で知られる歴史的な街です。街並みから受ける雰囲気も今まで訪れた街とは、ひと味違うように感じました。
朝、再びチェックインして(ボストンの Y.M.C.A. は、なぜかそのようなシステムでした)市内観光へ出かけました。行ってみたい所が2ヵ所ありました。ハーバード大学とボストン美術館です。ボストンは学生の街で、なかでもアメリカで最初の、今なお世界中の頭脳が集まる、ハーバード大学がどのような所か興味がありました。
ボストン美術館では、日本で見られない歌麿・北斎・広重の浮世絵作品を見たいと思っていました。自転車で、まずはチャールズ川を渡り、隣街ケンブリッジのハーバード大学へ。土曜日のせいか学生の姿は少ないようですが、その分多くの観光客が目につきました。結局、古い建物が立ち並ぶ大学構内を自転車で走り回り、ただ単にその空気を感じただけでした。
市内へ戻り、次に美術館へ。ボストン美術館は明治時代から日本とのつながりが深く、浮世絵をはじめ、古くから日本の美術品のコレクションで有名です。あいにく日本のコレクションのブースは改修中とのことで、11月までクローズされていました。広い館内、ゴッホ、モネ、ルノワール……その他の美術品を見て回りましたが、日本を代表する浮世絵を観ることができず、拍子抜けしました。
その後は、オールド・サウス・チャーチ前の民族衣装のパレード、60階建て総ガラス張りのジョン・ハンコック・タワーと隣のトリニティ教会、18世紀末に建てられたマサチューセッツ州会議事堂、〈ボストン茶会事件〉の現場、ボストン市民の台所クインシー・マーケットなどを訪ねました。