Sさんのお宅に厄介になって2週間が経っていました。十分にニューヨーク観光を楽しみ、英気を養うことができた私は、次の目的地イギリス行きの格安チケットを探すことにしました。
現地発行の邦人向け新聞に載っている旅行代理店を訪ねてみました。迎えてくれたのは60代とおぼしき年配の日本人男性、どうやら事務所は男性社長1人のようです。
安いチケットの相談をしてみました。社長はどこかに電話をしながら、私にどうするか尋ねました。「お願いします」その場で即決でした。
出発は3日後の午後9時、クイーンズの JFK 飛行場からのチャーター便、ロンドン Gatwick 空港行きです。その場でいくらでもいいという手付金を払いました。翌日、残金と引き換えにチケットを受け取りましたが、代金は忘れてしまいました。
その夜、早速Sさん達に3日後のロンドン行きチケットが手に入ったことを伝えました。安いチケットが手に入ったことを喜んでくれましたが、なんだかいつもと違って静かな雰囲気の夕食になりました。
仕事から帰ってきたWさんたちにも報告しました。私は、間借りしている2人の部屋に転がり込んだ居候です。なのに、彼らはベッドを一つ提供してくれました。私は、今まで寝起きをともにしたお礼を伝えました。
すると、日本語を話せるWさんが、
「Hさん、サヨナラのイッパイ行きますか?」
「えっ、これから一杯飲みにですか?」
「はい、ドウデスカ?」
「ええ、分かりました。行きましょう。お供します」