残念なことが一つだけありました。それはSさんがお酒を飲まないことです。
毎夕食にビールを1本飲んでいた私は、少し物足りなさを感じていました。Wさんは、そのあたりを察して誘ってくれたようです。皆さんにひと声かけて3人で出かけました。
タクシーで走ること20分ほど。着いたところはどこでしょうか、場所はわかりません。昼間と違いネオン輝く繁華街、いやどちらかというと、ちょっと怪しい感じの歓楽街のようです。
Wさんに案内されて一軒のお店へ、入口にはガードマンが1人立っていました。受付でチェックを受けて中に入ると、ビートの効いた音楽が聞こえてきました。薄暗いフロアの先、明るいライトの下、全裸の女性が踊っているのが目に入りました。
タクシーの降り際にWさんが言った〈おもしろい所〉というのはストリップクラブ(小さなフロアなのでハウス?)のことでした。
ちょうど曲が終わり、ダンサーは引き上げて行きました。フロアには所々に小さなテーブルも置かれています。ほとんどが白人のお客ですが、私たち東洋人を気にするそぶりもありません。
ビール1杯10$(入場料はなかったような気がしますが、勘定はすべてWさんが済ませてくれましたので、わかりません)。
コップ片手に空いているカウンター、いやステージの方へ進み出ました。ステージの中央前方に1本のポールが立っています。私たちは、そのポールの横に陣取りました。
「Wさんはストリップというかポールダンスには、よく来るんですか?」
「仲間とトキドキね。Hさん、初めてですか?」
「初めてです。映画で見て知ってるぐらいです。日本のストリップショーとは雰囲気が全然違いますよ」
「私も日本のストリップショー、知ってます。見たことあります」
「そうだ、Wさん、日本にいたんだっけ」
しばらくすると、場内に大音量の音楽が響き渡りました。どうやらショーが始まるようです。曲調が変わり、金髪の若いダンサーが出てくると、一斉に男たちから歓声があがりました。
音楽に合わせ踊りながらベスト、ブラ、ホットパンツと1枚づつ脱いでいきトップレスに、早くもTバックにハイヒール姿です。
ポールに脚を絡ませ、くるくると回り、リズムに合わせ激しく腰をグラインドさせると、先ほどにも増して大歓声があがりました。お客もじょうずに盛り上げています。
激しい腰のグラインドはチップの催促なのでしょうか、ドル紙幣をTバックに差し込む男性もいます。ダンサーは踊りながら、ステージ上をひと回り、うっすらと額には汗が。Tバックに差し込まれたチップはだんだん増えていきますが、どうやら1$紙幣が多いようです。
セクシーに踊るダンサー、ダイナミックに踊るダンサー、いずれも若くてスタイルは抜群です。合わせて30分ほどでしょうか、入れ替わり立ち替わり4人が踊り終えると、フロアは休憩に入りました。
「ドウデシタ?」
「よかったですよ、Wさん。いやぁー、いいですね。グッド、グッド!」
「私も日本で、いろいろ楽しくさせてもらいましたからネ。次のトコロもっと楽しいです。行きますか? 歩いて行けます」
「えっ、次ですか? ぜひ連れてってください」
Wさんは、よりディープなスポットへ案内してくれました。[Wさん、もっと早く連れてきてほしかったぁ……]