サイクリストにとって大事なことをもうひとつ。アメリカに比べるとイギリスでは公衆トイレをよく目にしました。
駅や美術館などの公共施設のトイレには清掃のオバちゃんがいるところもあり、洗面の脇にはチップ用の小皿が置かれ、英国紳士は用を足すとさりげなくペニー硬貨をその中に投げ入れていきます。
街なかや街道沿いにも公衆トイレが多くあり、丁寧に案内標示まで出ていますので、サイクリストには大助かりです。なかには座っても冷たくないように工夫された木製の便座トイレもあり、感心させられました。
初めての Bed & Breakfast
York の街を経て、Newcastle の南約30㎞の Durham 町へ。ここダラムには、大きく蛇行するウェア川沿いに11世紀末に建てられたダラム城とダラム大聖堂があります。
私がツーリングした4年後の1986年、ユネスコの世界遺産に指定されました。近年では映画「ハリー・ポッター」の〈ホグワーツ魔法学校〉のロケ地としても有名になりました。
時刻は5時過ぎですが、あたりは真っ暗です。宿探しのために町のインフォメーションセンターに行くと、1時で閉まったようです。入口横の掲示板には、イギリス版の民宿ともいえる Bed & Breakfast(B&B)のリストがあります。数軒のB&Bの電話番号を控え、公衆電話から電話をしてみました。
1軒目は不在、2軒目は留守番電話、3軒目でつながりましたが、営業しておらず、他のB&Bを紹介されました。紹介先の婦人はドイツ出身、訛りの強い英語で優しく出迎えてくれました。朝食付き個室1泊£5.50。イギリスで利用したB&Bで一番安値でした。
「宿さがし大変だったでしょう。もうシーズンオフでやってるB&Bも少ないしね」
「そうなんですか。3軒目の電話でここを紹介してもらいました」
「そうなの。とにかく今夜はゆっくりしてくださいね」
「はい。あの~、夕食がまだなんですけど、どこか良いところはありませんか?」
「近くのレストランがいいわよ。そんなに高くないし」
そういうと婦人は、レストランの場所を教えてくれました。シャワーを浴びて、早速行ってみました。看板には Hotel & Pub とあります。1階がパブ、2階がレストランとホテルのようです。2階に上がるとウェイトレスが「料理は、下のパブで注文してください」といっています。
メニューから適当に料理を選ぶと再び2階のテーブルへ。出てきた料理はエビの天ぷら、フライドポテト、人参とグリーンピース。それにパイントグラス(1パイント約570ml)でビタービールを2杯。値段は料理が£2.20、ビールが60pence×2で£1.20の合計£3.40でした。(当時のレートは1£=420円)
お腹一杯になり、満足してB&Bに戻ると、部屋の暖房を入れました。それは10ペンス硬貨を入れるとスイッチが入る電気ヒーターでした。その夜は暖かい部屋できれいなシーツと柔らかいベッドの上でぐっすり寝ることができました。
翌朝、婦人と一緒に朝食をすますと霧雨の中を出発しました。[B&Bって結構居心地がいいもんだ]