マドリッドまで行くには二つの峠を越えなければなりません。この日のコース、カンタブリア山脈には最初の峠 Puerto de Pozazal があります。
走り出して10㎞ほど、峠に近づくにつれ雨はやがて雪に変わりました。 [初日にインフォメーションで聞いた時には「この季節はめったに雪は降りません」と言っていたのになぁ]
恨めしそうに空を見上げる私に、すれ違う車は時折クラクションを鳴らして激励してくれます。
カンタブリア州とカスティーリャ・レオン州の州境、標高987m Pozazal 峠に着くころには雪も積もり始めていました。足先が冷え、せっかく治ったシモヤケの再発が気がかりでした。
滑る道に注意しながら峠を下り、もうひと踏ん張り60㎞ほど走ってたどり着いた町で宿を探すと、二つ星のホテルが一軒あるだけでした。寒くて動く気力もなく、スペインで最初で最後のホテルに泊まることにしました。1泊2食付き約5,000円。
案内された2階のフロアには客がいるようすはなく、私ひとりで貸し切り状態です。さすがホテル、廊下のコーナーには大きな花瓶にきれいな花が生けてあり、なおさら場違いな気がしました。バスタブにドップリと浸かり、冷えきった身体を暖めると1階のレストランへ。
どうやらこの夜、ホテルの客は私のほかに1組3人だけのようです。出された料理がおいしかったこともあり、ワインのボトルを1本空けると Está muy rico.(おいしいです)のメモ書きをテーブルに残しました。 [で、チップは?……]
セゴビアの街
Palencia からカスティーリャ・レオン州の州都でもある古都 Valladolid を過ぎ、濃霧のなか、ライトをつけて走行しました。国道から外れて Segovia(セゴビア)へ向かうと、やがて霧は晴れ、道の両脇に2本の白いラインが長く続いているのが見えました。枯れ草に着いた水滴が白く凍っていました。
丘の上から大聖堂の高い塔が見えてきました。マドリッドの北西約90㎞、標高約1,000mにある古都セゴビアです。紀元1世紀ごろ、近隣の山から切り出した花崗岩で建てられた有名な古代ローマの水道橋(1985年、世界遺産に登録)があります。高さ30m、長さ700m以上、アーチの数は100以上。丘の上からセゴビアの街に生活用水を送った水道橋は、広場の中央に美しく、そして存在感を持って立っていました。
もう一つ、川の流れに削られた高さ100mの崖の上に建つアルカサル城も有名です。15世紀、当時の女王がカスティーリャ王国の国王になると宣言したのが、ここアルカサル城だそうですが、むしろディズニーの「白雪姫」のお城のモデルになったことで知られています。