[まだ早いし、一杯飲んでくか]
私は、リスボンのナイトスポット、アルト・バイロに向かってブラブラ歩き出しました。
顔見知りのウェイター
アルト・バイロには釣りの帰りにブラッと入ったのがきっかけで、ときどき立ち寄る Bar(バール)があります。その店の若いウェイターは私と同程度の英語力で、ヒマなときは私に付き合い、いろいろと質問に答えてくれました。
英語ネイティブの話す英語は語彙も多く、私には理解できないことがよくあります。その点、彼との会話は使う単語が少なく簡単なものばかりなので、おたがい理解しやすいのです。
質問の内容は、知りたいポルトガル語や生活習慣、日常での疑問など、さまざまです。
給料の話のときも、自分たちウェイターやショップの店員の給料は月平均5-6万円で、決して十分とはいえないけれど、それなりにやって行ける、と話してくれました。
私が当時の日本人サラリーマンの平均年収は300万円だと伝えると、日本の高い物価ともども驚いていました。
カウンターにすわると、注文を聞きにきた彼に、A glass of Porto wine and salted olives, please.
初めて、いつものビールと違う、甘いポルトワインと塩漬けのオリーブを注文しました。私がポルトワインの試飲に行ったことを知っている彼は、私の注文にウィンクで答えてくれました。いつもより遅い時間帯の店は混んでいて、どうやら、彼には私の相手をする余裕はなさそうでした。
残り少ないタバコ(ポルトガルのタバコ、SG GIGANTE、約180円)に火を付け、2杯目のポルトワインを飲みほして店を出ました。
目の前を通り過ぎるトラムをやり過ごすし、軌道を横切ると、私の足はいつのまにか、港近くの娼婦街へと向かっていました。