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ぐるっとヨーロッパ: Portugal(16)素顔のリスボン[4]ディープな歓楽街へ

「日本人がよく行く<パスポート>というお店があります。可愛い子がいますよ」以前、バールで偶然出会った日本企業の駐在員が教えてくれました。

TEXAS・MEXICO・TOKYO……通りには店名のネオンサインが色鮮やかに輝いています。角ごとに立つ警官の姿も目立っていました。[大した賑わいだな]

[アッ、ここか] しばらく行くとの看板が目に飛び込んできました。入り口でドアマンのオジさんと握手を交わすと、八代亜紀の曲が流れる薄暗い店内に通されました。

フロア中央には、明かりのもと小さなダンスステージがあります。私はボックスシートをさけ、ステージの見えるカウンターの隅に腰掛けました。

ボーイがビールを1本運んでくると、100エスクードをその場で払いました。普通のバールで飲む数倍の値段ですが、後でボッタくられる心配のない明朗会計(?)です。やがて五木ひろしの曲に変わると、一組のカップルがステージに上がり、チークダンスを踊り始めました。

暗さに目が慣れ、あたりを見回すと日本人でしょうか、東洋系の船乗りらしい客が10人ほど確認できましたが、どうやら聞こえてくる会話は日本語ではないようです。

反対側のカウンターにはスーツ姿の男性が女性と並んで座っているのが見えました。さほど広くないフロアですが、客が少ないせいか、少し殺風景に見えます。おそらく港のロックアウトの影響で船が入って来ないのが原因でしょう。

客より女性の数が目立ち、一人でタバコを吸ったり、壁にもたれてぼんやりステージを眺めたりと、彼女達の手持ちぶさたなようすが見てとれました。

客の好みに合わせてか、それとも自分の趣味なのか、ドレスを身にまとい、派手なアクセサリーに濃いめの化粧、一方でジーンズとブラウスに控え目な化粧と彼女たちは二つのタイプに大別できました。

年令は22-23歳でしょうか、若い女性が私の隣に座りました。いささか酔っているようです。カタコトの英語で私に聞いてきました。

「カクテル ノンデイイ?」「イエス」

彼女がボーイに告げると、すぐさまカクテルは運ばれました。そして、その場で250エスクードを払います。[なるほどね。そういうシステムか]

「アナタ コンヤ ワタシノウチニ トマル?」「ノー」
「コンヤ トマル?」「ノー」
「ニンギョウ カッテ!」「ノー」
「タバコ カッテ!」「ノー」
「タクシーダイ ホシイ!」「ノー」

余りにもしつこいので、何がしかのお金を渡して言いました。

「他の男を探してくれ、俺は泊まらないから」
「ワタシ ソトヘデル ハンドバッグ ミテテ」「ノー」

最後は無理やり彼女にお金を握らせました。見るに見かねて横にいたお客が声をかけてきました。私が着席時に軽く会釈すると、会釈で返してくれましたので、おそらく日本人だと感じていました。

「お困りのようでしたね。アッ、私は船のコックです。あまりしつこい時は、トイレに行けばいいんですよ。そのうち女の子も他の男を探しますから」
「へぇー、そうなんですか。何せ初めてなもので」
「ここでは日本人が一番もてるんです、金遣いがキレイですからね」「へぇー」

♪♪「ダンシング オールナイト、言葉にすればァ~…」
いつの間にかスピーカーからは、もんた&ブラザーズの曲が流れ始めていました。ステージにはリズムに合わせて踊るカップルが増えていました。

「あそこで踊っている連中ね。あれはK国人の船乗りですけど、奴らは酔っぱらってよくモメるから、嫌われていますよ」「へぇー」
「それに、今夜はいないけどF国人の船乗りね。奴らは金にうるさいって言ってます」「へぇー」

日本人コックの話はまだ続きました。

「ここには日本人の駐在員や大使館の職員もよく来ますよ」「へぇー」
「一晩泊まって、4,500エスクード(約12,000円)です。朝メシを用意してくれる娘もいます。ああ、宿代はいりません、彼女たちはみんな自分のペンション借りてますから」「へぇー」
「何しろ日本人はイイお得意さまですよ。彼女たちの中には日本語の話せる娘もたくさんいますよ」「へぇー」
「いい娘がいたら、声をかけたらいいですよ」

話の最中に先ほどとは違う娘から声がかかりましたが、私はトイレに行くからと席を立ちました。すると彼女はこんどは日本人コックに話しかけ始めました。

トイレで財布の中身を確認して席に戻ると [アッ!]
どうやら私のお目当ての娘には先客が付いてしまったようです。[そうか、縁がなかったということだな]

日本人コックに声をかけ、フロアを後にしました。帰り際にフロア近くの売店でタバコを買うと、売店のオバアさんはつり銭を返さずに「シッシッ」と、まるで犬でも追い払うような仕草です。

[ハイハイ、分かりましたよ。おとなしく帰りますよ] そのオバアさんの後ろには何体かの可愛らしい人形が飾ってあります。おそらく女の子たちは、男に買ってもらった人形を返して、お金をバックしてもらうのでしょう。行き場のない人形たちは薄汚れて見えました。

♪♪「Y.M.C.A. Y.M.C.A…」背中から聞こえてくる曲は西城秀樹に変わったようです。

時刻は11時を回っていますが、店の外の賑やかさは増していました。何やら楽しそうな酔っ払いのオッさん、騒音に掻き消されないように大声で宝くじを売り歩く少年、相変わらずお金をせびる子どもたち、通りに立つ警官の姿も先ほどより増えていました。

alto-bairro01

見上げればネオンに負けじと、1月の寒空に星々がきらめいています。上気した私には夜風の冷たさも心地よく感じられました。[さぁてと、これからどうするかなぁ]

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