ポルトガル側の Vila Real de Santo António(サント・アントニオ)からスペイン側の Ayamonte(アヤモンテ)へ、フェリーで15分ほどかけてグアディアナ川を渡ります。フェリーで国境の川を渡るのは、デトロイト郊外のセントクレア川以来2度目になります。
スペイン側からやって来たフェリーは、車数台が乗れば一杯になるような小さなフェリーですが、少々混んでいました。どうやら多少物価の安いポルトガルへ買い物にくる人たちも乗っているようです。
「ビールやワインは安いアメリカに買いに行くよ」そう話していたカナダ人を思い出しました。国境を越えてというより隣町にちょっと買い物に行く、そんな感じなのです。それでも簡単なパスポートのチェックだけはあるようです。
国境の入管で〈‐FRONTERAS‐19.1.83 ENTRADA AYAMONTE〉のスタンプを押してもらい、1月19日スペインに再入国。ここで時刻が1時間進みました。
当時、ヨーロッパでは当然国境での入国審査がありましたが、現在では〈シェンゲン協定〉によりイギリスを除く多くのEU加盟国間で、入国審査もパスポートチェックもなくなりました。シェンゲンは、協定が結ばれたルクセンブルクの地名です。
日本人旅行者もシェンゲンビザを取得すれば、協定加盟国内であれば最初の国の入国審査と最後の国の出国審査だけで、特別なことがない限り、パスポートチェックもなくなりました。
いきなり怒りだしたW君
アヤモンテから Sevilla(セビリア)へと続く道は、大したアップダウンもなく二人の走りは快調そのもの、100キロ近い距離を稼ぐことができました。この分なら翌日にもセビリアに着きそうです。
いつものようにW君は晩飯の買い出しに、私は店の外でタバコを吸いながら自転車の見張りをしていました。ところが店から出て来たW君のようすが何だか変です。彼は感情がすぐに表情や言葉に出るタイプです。
「Hさん、いつもそうやってノンビリとタバコ吸ってますけど、たまには買い出しかわってくださいよ」
「いや、ノンビリとタバコって言うけど、一応ものが盗まれないよう、見張りをしているつもりなんだけど」
「見張りって言うけど、買い出しをしているのはいつも僕じゃないですか!」
国境を越えてから一日中気合いを入れて走ったせいで疲れていたのでしょうか、この日のW君はどこか虫の居所が悪いようで、かなりエキサイトしています。私は気持ちを率直に伝えることにしました。
「そうか。俺はW君が料理するのが好きだからと思って、確かに任せっきりだったけど」
「僕だってメニューを考えて買い出しして、面倒くさいと思うときもありますよ」
「オーケー。こらからは俺も晩飯のメニューを考えるし買い出しも手伝うから、言ってくれ」
二人で一緒に走り出して1週間、初めての嫌な感じになりました。気まずい空気はしばらく続きましたが、それでも晩飯の支度をしながらワインで乾杯をしたころには、なんとなくいつもの調子に戻り始めていました。
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