アフリカ行きの船の出る港町 Algeciras(アルヘシラス)へ向けて二人の自転車旅が再び始まりました。
大西洋や地中海から吹く風は1月下旬という季節を感じさせず、軽快なペダリングが続いていました。
「Hさん、暖かくていいですね。この分だとアフリカに行ったら、きっともっと暖かいですよ」
「だといいけどな。とにかく寒いのだけはカンベンして欲しいよ」
私の前を行くW君が急に自転車を止めると、土塀のそばに咲く花を見ながら
「花が咲いてますよ、白い。何の木ですかね?」
「いや、何だろう、わからん。何か桃の花に似ているけどな」
ちようどロバ車に乗ったオジサンが通り過ぎていくところです。W君が花が咲く木を指差しながら大声で、
「Señor! Qué~?」(セニョール! ケェ~?=オジサン、何っ~?)
「Almendras~!!」(アルメンドラだ~!!)
「何かアルメンドラって言ってましたよ。何ですかね」
「あッ、アルメンドラってアーモンドのことだよ。桜や桃の花に似ているって聞いたことがあるよ。でも、俺初めて見たよ」
「へーっ。これがアーモンドの花ですか。僕も初めてです」
見れば通りの向こうの川岸一面に白い花が咲いています。
「W君、あそこで一休みしょうか?」
「ええ、コーヒーでもいれますか」
お湯が沸くまでの間、二人で花の絨毯の上に大の字に仰向けになりました。全身で受ける日差しは暖かく、春が近いことを知らせてくれているようでした。