スペイン王国に統一される以前のイベリア半島では、ユダヤ教にイスラム教、そしてキリスト教と各々お互いを認める形でそれなりに共存していたようです。イスラム教徒が多かったアンダルシア地方でも、中世以降イスラム排斥が始まると〈モリスコ〉と呼ばれるイスラムからカトリックに改宗させられた人たちが出てきます。
しかし、そんなに簡単に改宗ができるとは思えません。一部の人びとは隠れイスラム教徒になったようです。そんな時代の名残でしょうか、この地方を走るとときどきヘンテコな教会が目につきます。それはモスクのような建物にチョコンと十字架を乗せた教会です。
(カトリック大国スペインですが、宗教の自由が認められた現在、数パーセントのイスラム教徒がいます)
さらに南へ。フラメンコの発祥の地、そしてシェリー酒の代名詞にもなっている街 Jerez de la Frontera(ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ)をへて港町 Cádiz(カディス)へ。
三千年以上前から開けた街カディスは、イベリア半島の最古の街の一つです。新大陸アメリカ発見後、コロンブスはこの港から再び出航しています。その後は植民地との交易の重要な港であったこともあり、イギリス海軍に幾度となく攻撃されています。
この日はカディスの街外れの海辺にテントを張ることにしました。穏やかに波が打ち寄せ、海面を赤く染めながら大西洋の彼方に日が沈んでいきました。アルヘシラスまでは、もう100キロを切っています。