入管ではパスポートチェックだけで、荷物検査もなくバックに忍ばせたワインも無事でした。セウタは街並みもふんい気もスペインと同じでしたが、モロッコへ入国すると、ようすがガラリと一変しました。
スペイン行きフェリーの乗船を待つ長い車列と人の列。人混みでごった返すなか、モロッコの民族衣装を着た人の姿もみかけられます。大きな声が聞こえてきました。
「チェンジ・マネー!!」
「チェンジ・マネー!!」………
多くの〈闇の為替〉に混ざり、相変わらず
「ハッシッシあるよ」の声も聞こえます。[大丈夫なのか。あんな大きな声で両替って、違法だろ]
状況のわからぬまま、いきなり闇の為替をしてトラブってもいけませんので、ここはひとまず正規レートで交換です。
100$=634dirham(ディルハム)、1ディルハム=約38円(当時)の計算になります。
のちに米ドル紙幣を闇レートで両替してみたところ、100$=1,250ディルハムでした。正規のレートの約2倍、恐るべし闇レートです。
これなら現金の米ドルを闇で両替したほうがはるかにお得です。ただし、これは当時の話、現在は日本円を直接モロッコ・ディルハムに両替できます。そのレートは、1ディルハム=約10円になっています。
スペイン領セウタ
以前ブログに書いたように、セウタは1415年にポルトガルのエンリケ航海王子が、イベリア半島とアフリカのイスラム勢力を分断するために占領してから長い間ポルトガルの領土でした。
1580年にスペインとポルトガルの連合王国が始まるとスペインの領土になります。その後、1668年に再びポルトガルが独立すると、セウタは正式にスペインに割譲されました。
1956年にモロッコはフランスの植民地(北部の一部はスペインの植民地)から独立すると、スペインにセウタの返還を求めます。しかし、スペインは「セウタは500年以上前から固有の領土」と主張して返還に応じません。
ジブラルタルの領有権を主張するイギリスと何となく似ています。スペインはジブラルタル海峡をはさんで、いまだに二つの領土問題を抱えているわけです。