モロッコの地図を購入してタンジールへ向かいます。海岸線を行く道は途切れているようで、一度南へ回り、ひと山越えて、再び海岸線に出なくてはなりません。
目に飛び込むアラビア語は右から左へのクネクネ文字でチンプンカンプン、完全にアウトです。ただ、道路標識だけは必ずアルファベットで地名が併記されているので助かりました。
地中海沿いを南へ走り出すと、いつの間にか青空が広がり、風もだいぶ収まってきました。
「僕ら、いまアフリカを走ってるんですよ。ワクワクしませんか? Hさん」
「うん。いいね。でもこの先何があるかわからないから、とにかく安全第一で行くよ」
「了解で~す」
ひと休みしながら、セウタの港と地中海を行き交う船をバックに写真を1枚撮ってみました。
海岸警備兵と一緒に一晩キャンプ?
久しぶりの山越えはハードに感じられました。途中で振り返ると地中海に突き出たセウタの街が小さく見えています。この先峠まではまだだいぶありそうです。
やっと下りが始まり視界が開けると、つづら折りの下りの先が海へとつながっているのがわかりました。
「今日は下ったところでテントを張ろうか?」
「そうですね。登りは結構ハードでしたから」
浜辺にテントを張り、食後二人で一服していると、数十メートル離れた岩影からライトが二つ、私たちのたき火を目標に近づいてくるのがわかりました。一瞬緊張が走りましたが、たき火のあかりに浮かび出された姿からすると若い兵士(当時のモロッコには兵役がありましたが、2006年に廃止されました)のようです。私達の顔をライトで照らしながら何か言っています。
W君がスペイン語と英語で「日本人の旅行者だ」と伝えると、どうやら理解したようです。二人は沿岸警備兵、夜通しの警備にあたるようで、おそらくこの砂浜は彼らの警備ポイント、そこへひょっこり私達がオジャマしたようです。警備兵に守られて(?)の野宿、こんな安全なことはないかもしれません。
何やらいい香りがしてきました。寝支度を始めた私達のそばで、一人の兵士が沸かしたお湯でコーヒーをいれ始めたようです。すると、もう一人の兵士は何とハッシッシを取り出しました。私たちに向かって「やるか?」と聞いてきましたが、当然断りました。どうにも気楽な警備のようです。