この日は朝から雨、テントの中で食事をすませると午後から走り出しました。小雨の降る中着いた街 Sidi-Kacem(シディカセム)でホテルに泊まることにしました。(二人1部屋1泊=約1,400円)
チェック・インをすませ、やれやれとドアを開けるとなにやら動くものが、なんとネズミ二匹が目に飛び込んできました。あわててフロントに戻り、部屋を変えてくれるよう頼むと、驚いたことに返事は「どの部屋も同じだ。もう大丈夫、いなくなってるよ」。
外はすでに夕暮れ、小雨のなか、ホテルを探すのも野宿の支度も面倒です。この夜は再びネズミが出ないことを願って寝ることにしました。
当時、モロッコの上下水道事情は決して誉められたものではありませんでした(水道は都市部以外はありません)。田舎に行けば行くほど顕著で、この夜泊まったホテルがそうでした。ポンプを備えるホテルですが、シャワーの水は出ません。
トイレには日本でいう小便器はなく、きんかくしのない和式トイレのような水洗トイレがあるのですが、これまた水が流れません。トイレには水の入ったバケツ二つと桃缶より一回り大きい缶カラが置いてあります。
どうやら、用便後にバケツの水で流し、もう一つのバケツから缶カラで水をすくって尻を洗う、というシステムのようです。このやり方に慣れるまで、いささか抵抗がありました。
ジェラバの男性と記念写真
フェズまで40キロほど、徐々に道は登り始めました。街道沿いには集落が点在し、時おり子どもたちが、走り抜けて行く私たちに手を振ってくれます。
羊の放牧が目立つようになってきました。街道沿いで羊の見張りをしている子どもたちも手を振っています。あたり一面には緑の平原が広がっていました。
道端で昼飯をすませて出発しようとすると、民族衣装〈ジェラバ〉を着た男性がやってきました。お願いをして写真を撮らせてもらうことに。
そこへ「俺たちも撮ってくれ!」と、学校帰りの男の子たちがやってきました。フランス語の教科書やノートを拡げ、横に一列になって大勢で写真をとることになりました。
〈ジェラバ〉はフード付きの全身をスッポリと覆い隠すモロッコの民族衣装です。アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」に登場するネズミ男が着ている、映画「スターウォーズ」でよく見たあの衣装です。寒暖差の激しい気候の中、強い陽射しや砂漠からの強風を防ぐ工夫がされています。