「Hさ~ん、バンダナ持ってった!」
W君の大きな声がしました。走り出そうとする私の自転車にくくりつけてあったバンダナを悪ガキが引き抜いたようです。私は自転車を一旦止めると、日本語で怒鳴りました。
「オイッ、返せ!」
「俺じゃない」「俺じゃない」「俺じゃない」……
カバンのなかを見せながら、子どもたちはトボケています。押し問答がしばらく続きましたが、結局のところ誰が盗んだのかわからずじまいで諦めました。戦利品(?)のバンダナを自慢する悪ガキの姿が目に浮かびます。それにしても子どもだちは油断なりません。
時には自転車めがけて石を投げつけてくるいたずらっ子もいます。モロッコの大人は手を出すセッカンを含めて子どもをよく叱ります。何度か子供が殴られるようすも見ました。私たちに対しても、子どもが悪いことをしたら「殴れ」「蹴れ」と言いますが、さすがにそれはできません。でも何だかわかる気がしました。
旅の記録を書き込んだ手帳に当時のモロッコの就学率がメモってありました(出所不明)。
・小学校 65%(うち女子35%)
・中学校 25%( 〃 20%)
・高等学校 5%( 〃 10%)
文字の読めない子どもも大勢いたのです。たとえ小学校でも通える子どもは恵まれているといえるでしょう。