全体がタイル張りの風呂場はかなり広くて、日本の一般的な銭湯の男女合わせた倍ほどあったと思います。湯気が立ち込める風呂場全体は蒸し風呂みたいで、湯船はありません。
お湯と水が出る蛇口が数ヵ所。その反対側にお湯の流れ込む、さほど大きくない湯だまりがあります。
奥の壁には一列に温水シャワーが10個ほど並んでいて、それぞれ板で仕切られています。内側からドアを閉めることができ、ここで汗を流し、体を洗う場所になっています。
風呂場の中央には高さ70-80㎝、広さ四畳半ほどのタイル張りのスペースがあり、腰かけたり横になっている人がいます。
横になっている人のなかには、お腹の出たハマムの従業員にマッサージしてもらっている人もいました。マッサージが終わると、次は蛇口の前で体を洗い流して、垢すりをしてもらっています。
子どものころ、日本の銭湯で見た光景を思い出しました。昭和30年代前半までは、東京の銭湯にも三助(さんすけ)と呼ばれる、江戸時代から続く職人さんがいました。かま焚き、風呂場掃除、客の体を流す。この三役こなすということで三助と呼ばれたそうです。
番台でお客が「流しを頼むよ」と言うと、しばらくして風呂場の奥から腹にさらしを巻き、ピッチリとしたサルマタをはいた威勢のいいオジサンが出てきます。
三助のオジサンは客の背中を流すと、肩を「ポン、ポン……」と風呂場中に響くいい音をたてて叩き、次に頭から腕そして背中とマッサージをしていきます。そんなようすが子どもの目にカッコよく映りました。
お腹の出たモロッコ版三助にマッサージされる姿を横目に、W君と私は腰かけてシャワーの空くのをまっていました。私が先に空いたシャワー室に入り体を洗い始めました。すると、しばらくしてコトは起こったのです。荒い息づかいとともに、
「はぁ、はぁ、はぁっ」
「うっ、うっ、う~~ん」
「おっ、おっ、おっーおっーーっ!!」
何と、男同士のヨガリ声です。二つ三つ隣のシャワー室から聞こえてくる感じです。何だかその場を立ち去りたくなった私は、急いで頭を洗うとシャワー室を後にしました。
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