当時、アルジェリアとモロッコの関係は、決して良好とは言えませんでした。
第二次大戦後いち早くフランスとスペインから独立したしたモロッコは、「東側」ではないにもかかわらず、旧ソ連・中国・キューバなどの共産圏の国々と同様、独立のためにフランスと戦うアルジェリアを支援しました。
これが、多くの犠牲者を出し、アルジェリアとフランスを7年以上も混乱させ続けた〈アルジェリア戦争〉です。
1962年にアルジェリアが独立すると、翌年皮肉なことに同胞と思われたモロッコとの間で国境紛争が起こります。5年間続いたこの紛争はアフリカ統一機構(OAU)により、国連の手を借りることなく一応の終息をみました。
しかし、その後〈西サハラ紛争〉が起こると再び両国の関係が悪化します。アルジェリアとモロッコの国交が正式に回復したのは、私が旅行してから5年経過した1988年になってからです。ただし、未だに〈西サハラ問題〉はくすぶっていて解決には至っていません。
緊張のアルジェリア入国
アルジェリア側のゲートが近づくにつれ、カメラ撮影禁止の標識が目立ってきました。軍の施設でもあるのか、アルジェリア側の方が何やらピリピリしているようにも感じられます。
モロッコ側と同じく警備兵の立つゲート脇の事務所でチェックが始まりました。まずはウジダの街で発給されたビザを提示し、入国書類に型通りに記入。その後別室で所持金やカメラなどの貴重品を申告。同時にハワイでのトランジット以来の手荷物検査を受けました。それは自転車のバッグの中までチェックするかなり入念なものでした。
最後に「強制両替を町外れにあるドアンヌでやるように」と係官に指示され、晴れて入国となりました。モロッコ、アルジェリア両国とも国境と税関の2ヵ所のチェック・ポイント、こんなことはさすがに初めてでした。
ゲートの先にはモロッコ側にもまして、まるで砂漠のような乾いた大地が広がっていました。ベニ・ウニフの町へ向かって2キロほど走ると、
「オアシスですよ!! Hさん、見てください。オアシスですよ」
「うん。確かに砂漠のなかのオアシスみたいだな」
W君の指差す先には赤茶けた風景のなかにヤシの木に囲まれた白い建物、アルジェリア側の税関事務所ドアンヌが見えています。
彼が叫んだように映像や写真でよく見るオアシスのような光景です。写真に収めたいのですが、残念ながら撮影禁止の標識。(雰囲気を絵ハガキの写真で!?)