ここでまた問題が起きました。国境で係官に言われたように両替をしようとしたのですが、ドアンヌでは現金以外の両替がダメでトラベラーズ・チェックでの両替ができないのです。
「この先に Ain Sefra(アインセフラ)という町がありますから、そこのバンク・アルジェリアで両替して下さい」
「えっ、この町には銀行がないんですか?」
「小さな町ですから、銀行も両替所ありません」
幸いお金に関しては、W君がモロッコで闇で両替をした100$分の1,200 Dr(ディナール)がありましたから、とりあえず心配はいりません。
私達が持ってるアルジェリアの資料といえば、ウジダの街のアルジェリアの出先機関で手に入れた地図が1枚あるだけです。もちろん二人とも砂漠に行くつもりはありませんが、この先のルートを含めてベニ・ウニフの町で情報の収集をしなくてはなりません。
当時のアルジェリアには、サハラ砂漠を縦断する2本の幹線道路が走っていました。1本は首都 Alger(アルジェ)からニジェール共和国まで行く国道1号線。そして、もう1本が地中海に面したアルジェリア第二の都市 Oran(オラン)から Mascara(マスカラ)の街を経てマリ共和国まで行く国道6号線です。その国道6号線がこのベニ・ウニフの町を走っているのです。
係官が言うアインセフラの町は、国道を北東に150キロほど行ったところにあります。ただ、その途中には町らしきものが地図に載っていないのです。
〈情報収集はトラック運転手〉
時刻は2時、この時間から走り出すと場合によっては途中2泊になるかもしれません。ここは水の補給などを考えると翌朝出発して、確実に途中1泊のほうがベストの選択です。
税関から伸びる道を真っ直ぐ進むと、すぐに町なかを突っ切る国道にぶつかりました。国道沿いのカフェに中型トラックが停まっていました。私の経験で一番正確な情報をくれるのはいつもトラックの運転手です。
「W君、ちょうど運ちゃんがいるよ。ちょっと聞いてみようよ」
「そうですね。この先、どうなのか気になりますね」
「パルドン、ムッシュ。アインセフラ…… 」
40代とおぼしき二人組の運転手に声をかけてはみたものの後の言葉が続きません。私は地図を広げて、身ぶり手振りを交えて英語で聞いてみました。片方の運転手がうなずいています。アインセフラまでの道中を知りたがっているのが伝わったようです。
「……??……カム、カム!」
「トラックに乗ってけって言ってんじゃないですか?」
「うん。俺もそう思う」
しゃべる言葉はアラビア語ですが、身ぶり手振りで相手の言いたいことは何となくわかります。
「乗っけてくれるの?」
「……??……オーケー、オーケー!」
「どうしましょう。乗ってきますか?」
「うん。またには車に乗るのもいいか」