聞こえてくるのはトラックが風を切る音と走るタイヤの音だけです。傾きかけた太陽に照らされて、砂丘が明るく光って見えます。
徐々に後退して行く砂丘を見ながら「今、砂漠の端ッコを走っているんだ」そんなことを思っていました。〔走っているのはトラックですけど!?〕
途中で〈連れション〉休憩を5分とっただけで走り続けること2時間半、トラックはアインセフラの町に到着です。150キロの距離を2時間半ですから、時速60キロで走ったことになります。やはり道中町らしいものはなく、国道沿いに小さな集落が1ヶ所あっただけでした。
運転手は銀行の場所を尋ねると、両替をする私のためにトラックをバンク・アルジェリアの前につけてくれましたが、時刻は5時ジャスト、残念ですがちょうど閉まったところです。明朝9時に開くとのことで翌日出直すことにしました。
「シュクラン、ムッシュ」
「ボン・ヴォヤージュ」
交わす言葉はひと言ふた言ですが、親切な二人組のトラックの運転手と互いに握手をしながらお礼を伝えると、この日はあえて町外れの砂地にテントを張ることにしました。
「サソリに気を付けてな」
「あっ、サソリね。忘れてましたよ。いますかね?」
「大丈夫だろうけど、まあ冗談抜きでテントの出入りは注意しよう」
「はい。そうですね」
晩飯の間は気が付きませんでしたが、蝋燭の灯りを消してあたりが暗くなると、遠く町の明かりがかすかに見えます。テントの中から見上げると、これでもかというほど夜空に星が輝いていました。〔星ってこんなにあるんだ。雨の降る穴とは良く言ったもんだ〕
やっと強制両替を終える
最近は国によって少々様変わりしたようですがイスラムの休日は金曜日、この日は日曜日ですがアルジェリアでは銀行は開いています。朝イチで銀行に行き、強制両替1,000ディナール分の米ドルを払い込みました。
230$=1,039.6 Dr(1ディナール=約54円になります。W君の両替した闇レートが100$=1,200 Drですから、なんと倍以上の差があります)
1ヵ月の観光ビザで約5万5、6千円の両替をさせられたのですが、貧乏旅行者の私にとって結構キツイものがあります。
独立後のアルジェリアは社会主義国家、共産圏の国々では少しでも外貨獲得のために外国人旅行者に強制両替をさせるのは当たり前のことでした。(この後、私は北アフリカから再びヨーロッパに渡ると東欧でまた強制両替をすることになります)