さっそく、W君と諸々の買い出しを兼ねて、アインセフラの町を歩くことに。市場の入り口ではちょうどトラックの荷台から積み荷のオレンジを下ろしています。私は下でオレンジを受け取っているオヤジさんに、
「オレンジを1キロください」
「……??……」
どうやら「市場の中で買え」と言っているようです。諦めて歩き始めた私をオヤジさんは引き止め、荷台の上の若者にオレンジを6-7個持って来させました。
「いくら?」と尋ねると、「金はいらない、タダだ」とジェスチャーで返事が。W君と二人で「シュクラン、ムッシュ」。
「何を探しているの?」
突然、20代後半と思える青年に英語で話しかけられました。
「パンと砂糖だけど?」
「オーケー。店に案内しましょう」
「英語、うまいね。どうして?」
「私は英語を教えています」
「えっ、英語の先生なの。どおりで俺よりうまいわけだ」
パン屋でホブスを一つ、1.1Dr(約60円)。
続いて食料品店で砂糖を500グラム、1Dr(約54円)。
彼は時間があるようで、私たちをカフェに誘うとコーヒーをご馳走してくれました。私たちにとっては、英語の先生にいろいろと聞けるいいチャンスです。
「僕たち、これから北上するんですけど、この先に町とか村とかありますか?」
「大丈夫ですよ。1日走って何もないということはありません」
「そうか、良かった。自転車旅行は食料と水が一番心配なんです」
「そうですよね、心配ないと思いますよ」
W君の質問で私は思い出したことがありました。水が欲しい時になかなか相手に伝わらないのです。
「あっ、そうだ。プリーズ・ギブミー・ウォーターって、アラビア語でどう言うの?」
「水をください、ですか? アラビア語では、ミルフォドルィック・アティニー・マと言います」
「水はマ?」
「う~ん、ちょっと違います。正確には、ィマです。マでも通じると思います」
「パンをくださいは、アティニ・ホブス、でオーケーですか?」
「はい、大丈夫です」
どうやら、いろいろと応用できそうです。
彼にはお茶を飲みながら、その他いろいろ聞くことができました。ラッキーな出会いだったと思います。