お目当てのガスカートリッジは見つからず、アルジェの〈ホテル・アフリカ〉には2泊しただけで出発することにしました。
左手にアルジェの港が見えています。その海外線から南へと走り、郊外の国道5号線に出るつもりです。
フランスの作家カミュに小説「異邦人」の中で美しすぎるといわせたアルジェの港には数多くの船が停泊していました。発展中のアルジェリアをまさに象徴しているようです。
次なる目的地アルジェリア第3の都市、古都 Constantine(コンスタンチーヌ)を目指します。1週間ほどの行程になりそうです。
再び登りが始まりました。この日は朝から10キロ走って標高を100m稼ぎ、20キロ走って350mと、半日ずっと登りが続いていました。
途中の村のカフェで、1リットルのレモネード(約135円)をW君と二人で飲み干すと、この日最後の峠を目指しました。峠の手前8キロほど、小川で顔を洗い、しばし休憩。そして峠までは1キロを切ったでしょうか、
「じゃあ、行くよ。いい?」
「いいですよ。行きましょう」
「せーのッ、ゴーッ!」
また、いつものように二人だけのレースが始まります。スピード・メーターは時速12キロを表示、峠が見えてきました。W君が先にスパート。
互いにエンジン全開フルスロットルです。頂上に到着すると二人とも自転車から転げるようにその場に倒れ込み、呼吸は乱れ、息は上がり、おまけに咳き込む始末です。結果はいつも同じ、先着するのはW君です。こんな二人だけのレースも単調な走りのなかでは、いいアクセントになっていました。
私たちも相手も双方ともヒマなのか、時として道端で出会った人とどちらからともなく声をかけると互いに握手、そこから簡単なおしゃべりが始まります。
私たちに対する質問は「お前らどこから来たんだ?」「で、なに人だ?」。
私たちからの質問は「何頭ぐらいの羊を放牧してるの?」「この畑で何作ってるの?」。
話の内容はいたって他愛ないものですが、少しでもコミュニケーションが取れればと思っていました。
この夜のキャンプ地は標高550m、地中海からは100キロほど内陸に入ったところです。コンスタンチーヌまでの国道はアップダウンが続き、この先にはもう一つ山並みが待ちかまえています。
アルジェリアの旅程も半ばを過ぎましたが、35年前のツーリングを思い起こしながら綴る不思議な旅行記の魅力に嵌まった者の一人として、この旅行記が終わることなく、いつまでも続くよう祈っています。
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自転車旅のブログも、お陰で半分過ぎました。このあとチュニジア国境で、忘れられない出来事が起こります。引き続きのチェックをお願いします。
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