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異文化・北アフリカ: Tunisia(3) 見張り付きでカフェへ

チーズをはさんだパンをかじりながら、非常用にと残しておいた最後のキャンピングガスでお湯を沸かすと、いれたての温かいコーヒーをすすりました。温かいコーヒーが、しばし国境で軟禁(?)されていることを忘れさせてくれました。

食後は事務所のコンクリートの床にシートを敷き、寝袋にくるまって寝るだけです。ヒマな私は係官に所内をスケッチしていいか尋ねましたが、返事は「ダメだ」でした。

「Hさん、僕がつまらないことしたせいで、こんなことになってスイマセン」
「いいよ、気にすんなよ。国境でこんな風に寝袋にくるまって寝るなんて、そうそうできないよ。いい経験になるよ」
「そうですか? あしたの朝には入国が許可されるといいんですけど」
「大丈夫だよ。オーケーが出るよ」

さすがに夜中に国境を越える車は数台。何とか二人とも3-4時間ほど眠ることができました。

翌朝には、きのう一日降り続いた雨も上がっていました。私たちは久しぶりに米を炊き、缶詰めをあけて朝飯をとりました。まだW君の身元照会の返事は来ず、係官にもう少し待つように言われました。

朝飯をすますと、入管事務所のエントランスにすわって、外の風景をスケッチ。連絡を待ちくたびれたのか、W君は寝袋にくるまり事務所のいすに腰かけてウトウト。

時刻はいつの間にか昼に。パンをかじり簡単な昼飯を食べ終えると、やることがありません。私は聞いてみました。

「二人でカフェへお茶を飲みに行きたいんだけど、いいかな?」
「かまいませんが、見張りを付けます」

軟禁状態も長くなり、申しわけないと思ったのか、係官の返事は意外にもオーケーでした。

事務所の雑用係らしき若者を見張り役に引き連れると、水溜まりを避けるように飛び越えて、すぐ先のカフェへ。昨夜は気づきませんでしたが、店主がシャレたつもりなのか、店名はドアンヌ(税関)とあります。

薄暗い店内のカウンター越し、店主の頭上の白黒テレビに、見覚えのあるアニメが写し出されています。日本のアニメ〈みなしごハッチ〉です。

チュニジアにも日本のアニメが進出しているようです。私が「日本のアニメだよ。知ってる?」と聞くと、見張り役の若者は大きくうなずきました。

「確か、僕が小学6年か中学の頃ですよ、〈みなしごハッチ〉をテレビでやってたのは」
「じゃ、俺はもう仕事に就いてたはずだ」

注文したコーヒーがカウンターに運ばれました。

「あのさぁ、もし今夜も事務所に泊まるように言われたら、俺は日本の大使館に連絡しようと思ってんだけど」
「そうですか。確かにパスポートを破って、疑われてもしょうがないんですけど」
「けど、怪しいヤツが自転車に乗って、しかも嵐の中を国境なんか越えないって言うんだよな」
「正直、僕もだんだんイライラしてきました」
「そうだよな。まあ、いずれにしてももう少し待ってみようよ」

アラビア語をしゃべる蜜蜂のハッチは、テレビのなかで自由に飛び回っていました。

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