朝早くから、私たちは自転車でナポリの港へ向かいました。目的はフェリーでカプリ島の〈青の洞窟〉へ向かうためです。W君も私と同じで青の洞窟をテレビで見たことがあり、ぜひ行ってみたいとのことでした。
カプリ島まで中型フェリーで約1時間半、港から30キロほど南のナポリ湾を出たあたりにあります。きのうの夕暮れ時、チェニスからのフェリーからボンヤリとしか見えなかった大噴火で有名なベスビオ火山も今はハッキリ見えています。
フェリーは、多くの観光船が停泊するカプリ島の北の港マリーナ・グランデに到着。海蝕洞 Grotta Azzurra (グロッタ・アズーラ、青の洞窟)は港の西側にあり、島の周囲はほとんど断崖絶壁のため、ここで20人ほどが乗れるモーターボートに乗り換えます。そして、さらに20分ほどかけて洞窟脇に作られた小さな桟橋へと向かうのです。
桟橋の周囲には、オジサンたちが操る手漕ぎボートが何艘も待ち構えています。観光客は3-4人ずつ手漕ぎボートに分乗し、指示されるまま頭を下げて狭い入り口から洞窟内へ入っていきます。思いのほか広い洞窟内部は、入り口から差し込む日光の下からの反射光に照らされ、水面が青く光って見えます。
観光客で混んでるせいか、その間わずか約1分、すぐに洞窟の外へ出てしまいます。入れ替わり立ち替わり、全ての観光客の洞窟内の見物が終わると、モーターボートは再びマリーナ・グランデへ戻りました。
カプリ島には他にも観光スポットがあるようですが、私たちは午後からナポリの街を自転車に乗ってノンビリ散策するため、すぐフェリーに乗り込み、ナポリの港へ戻ることにしました。
カプリ島への往復フェリー代5,800リラ+洞窟へのモーターボート代4,000リラ+手漕ぎボート代 (入洞料) 4,500リラ=14,300リラは約2,600円。
映画で見たナポリの街
「ナポリを見てから死ね」誰が言ったか知りませんが、ローマ、ミラノに次ぐイタリア第三の都市ナポリは観光地として有名です。日本にも東洋のナポリと称される観光地がなぜかいくつもあります。
ちなみにピザのマルゲリータ、コーヒーのエスプレッソはナポリが発祥の地といわれますが、スパゲッティのナポリタンは日本でアレンジされたもののようです。
スパッカナポリと呼ばれ、一直線にのびるメイン通りの周辺にはナポリの下町、旧市街が広がっています。その後、ナポリ旧市街は歴史地区として1995年に世界遺産に指定されました。
私が思春期のころ、邦画、洋画を問わず映画は多くの人に親しまれた娯楽でした。スケールの大きなハリウッド映画にワクワクし、片や手作り感あふれるフランスやイタリア映画にも魅力を感じていました。
なかでも、クリント・イーストウッドやフランコ・ネロやジュリアーノ・ジェンマが活躍するイタリアのマカロニ・ウェスタンは理屈抜きで楽しめました。
一方、黄金トリオと呼ばれたビットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ主演の『昨日・今日・明日』や『あゝ結婚』など人情味あふれる登場人物によって繰り広げられる悲喜こもごもの物語の舞台となったのが、南イタリアを代表するここナポリの街です。
大通りから一歩入ると、なんとなく見覚えのある(?)広場や教会、下を歩く人などお構い無し路地を挟んでバルコニー越しにお喋りをする人、窓から垂れ下がっているのは下とのやり取りのためのカゴ、そして頭上高くはためく洗濯物、そこには映画で見た生活感あふれる光景が広がっていました。