海沿いを行く国道8号線は、そのまま首都アテネへつながっています。左手にコリンティアコス湾を望みながらの走行は、強い追い風にのって順調に100キロほどの距離を稼ぎ、この日も浜辺にキャンプ。運河で有名な Korinthos (コリントス)の街まであと15キロほどです。
ワインを飲みながら晩飯を終えたころには昼間の強い風もやんでいました。あたりはすでに暗く、海上には灯台の3本の光、地図で見る限り10キロはあるだろう対岸からの光も一筋届いています。
ロウソクの灯りのもと、穏やかな波の音を聞きながらW君とコーヒーを飲んでいると、
「ヒュ~、ヒュ~ル~~。ドーン、ドドドーーン」
何かのお祭りでしょうか、近くの町で花火を打ち上げ始めました。小1時間続いた花火が終わり静寂が戻り、テントで横になっていると、打ち寄せる波の音が再び聞こえてきました。
コリントス運河
〈コリントス運河〉はコリンティアコス湾とサロニコス湾を結んでいます。運河の構想は古代ギリシャのころからあったようですが、実際に工事が始まったのはローマ皇帝ネロの時代。
ネロの自殺後に工事は頓挫し、多くの時が過ぎた1893年に20年以上の年月をかけて完成しました。スエズ運河やパナマ運河のように航路の大幅な短縮はありませんが、その短縮距離は400キロほど、現在年間1万隻以上の航行があります。
国道8号はコリントスの街を抜けると、そのままコリントス運河に架かる橋を通過していきます。橋から下を覗いてW君が歓声をあげています。
「ワーッ、深いですよ。海面まで50mぐらいありそうですよ」
「うん。そのぐらいあるかも。でも、何か掘りっぱなしって感じだな」
「Hさん、ここから船が通るの見ましょうよ」
「おおっ、いいよ。見よう、見よう」
30分ほど経過しましたが、1隻の船も通過しません。ちょうど通りかかった若者たちに聞いてみました。
「さっきから船が通るの待ってるんだけど?」
「そのうち通るよ。1日二、三十隻は通過するから」
「そう、わかった。もう少し待ってみるよ」
「この運河、長さはどのくらいあるの?」
今度はW君が聞いています。
「6キロちょっとだよ。運河の幅があまりないから大型タンカーは無理だけど、運がよければタグボートに引かれた旅客船が見れるよ」
「へぇー、ますます見たくなったよ。ありがとう」
都合2時間ほど橋の上で待ってみましたが、結局クルーザーでしょうか、小型船が1艘通過しただけでした。