「二人で過ごすのもいよいよ最後ですね。今までありがとうございました」
「何だよ改まって、らしくないじゃん」
「いや、リスボンからHさんと一緒に走り出して、いろいろあったけど楽しかったです」
「一緒に走って4ヵ月か。俺の方こそ礼を言うよ。とにかくアテネまで無事に走ってこれてよかったよ」
ベッドに横になりながら、さらに二人の会話は続きました。
「自転車はもう必要ないからアテネで買い取ってもらうって言ってたよな」
「ええ、たいしたお金にはならいでしょうけど」
「そうだよな、あまり旅費の足しにはならないだろうな。買い取ってくれる自転車屋は市内観光しながら探すか?」
「そうですね。いくらでも買ってくれればいいです」
「俺もチェーンとフリーを新品に交換してもらうよ。最近チェーンが伸びてきて踏み込むと滑るんだよ。ペダリングが」
「チェーンって、前はいつ交換したんですか?」
「去年の9月かな、アメリカのオハイオだったと思う。あれから1万キロ以上走ってるし、ついでにグリスアップも頼むつもりなんだ」
W君にとって物価の安いギリシャでの自転車の買い取りはうま味がありませんが、逆に部品交換には都合よく、私は以前からギリシャでと考えていました。
アクロポリスの丘に上る
アクロポリスの丘は神々の神殿があるように神聖な場所であるともに、外敵に備えるには都合のよい三方が絶壁の要塞でもありました。標高150mの岩山アクロポリスに上る入口は南西の1ヵ所のみ、私たちの宿の反対側になります。
アクロポリスの丘はその姿をアピールするかのように毎晩ライトアップされ、アテネを訪れた観光客は否が応でも上りたくなります。
この日は日曜日で幸い入場料は無料、夏期のオープンは朝7時半からです。私たちは朝イチで散歩がてらアクロポリスへ。ちなみに、アクロポリスは1987年に世界遺産に指定されています。
市街地との標高差は70-80mほど、上り始めるとすぐ右手に、今でもオペラやコンサートが開催されるヘロデス・アティクス音楽堂(オデオン劇場)が見えてきました。
他の観光客に混じって上ること10分ちょっと、丘の上からはアテネ市内が一望できます。ひときわ目を引くのが北東に相対する標高277m、アテネで一番高いリカヴィトスの丘です。
アクロポリスの丘では大きいパルテノン神殿が存在感を示しています。神殿を支える柱は何段にも重ねた大理石で作られたものでした。
写真でしか見たことのない私は1本の柱だと思っていましたが、実際には重ねられたものです。確かにあんなに大きな大理石の柱では作業上無理がありそうです。
パルテノン神殿が建設されたのは紀元前447-432年。ピタゴラスはすでに没していましたが、ソクラテスはまさにリアルタイム、その後のプラトン、アリストテレス、アルキメデスなど、ギリシャが生んだ偉人たちはパルテノン神殿を仰ぎ、また神殿の周りを歩きながら思いを巡らせていたのかもしれません。
当時の絵ハガキを載せてみます。
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