これまでずっと〈W君〉と表記していましたが、実際には、彼の下の名前を呼び捨てにしていました。
彼と二人で走り始めた日、朝早くリスボンの郵便局の前で待ち合わせ、北アフリカへ向け走り出しました。
ものの1時間もしないうちに「Hさん。W君というのはシックリこないので、下の名前で呼んでください。もちろん呼び捨てでいいですから」と申し出がありました。それ以後、私は彼をずっと名前で呼んでいました。
彼の名前は私のHのイニシャルとカブります。hにしようとも思いましたが、そうするとお世話になったチュニスの大使館員hさんとこれまたややこしくなります。
そこで苗字の〈W君〉としたのですが、いま考えると違うイニシャルでもいいから呼び捨てで表記した方が、二人の関係を含めてニュアンスを伝えられたのではと思っています。ただし、このあとも〈W君〉でいきます。
下の名前を呼び捨てにしていたものの、最初は少々ギクシャクしていました。二人が本当に打ち解けたのは走り出して1週間セビリアに到着後、W君が元カノのシャナにもう一度会いたいとリスボンに列車で戻り、4日後に再びセビリアに戻ってきてからです。そこから本音で話せるようになったと思います。
その後、私はオスロの日本大使館でネパールからのW君の手紙をちゃんと受け取りました。いろいろとおもしろいことが書かれていました。帰国後の彼のことも含め、追ってブログに書かせてもらいます。
W君の置きみやげ
W君はネパールに寄って帰国するにあたり自転車を売り払い、不要品を日本へ送っていました。そして、「欲しいものがあったらあげますよ」というのでもらったのが、ノルウェー製の調理具と、どこ製かわからないズボン・クリップです。
カッターとピーラーを合わせたようなこの調理具、W君が使っているのを見てスグレモノと感じていました。
三角形の長辺には大小の波形が打たれ、パンや根菜類がカットできる包丁代わりに。ピーラーには波形部分にちゃんと刃がついていて、皮むきのほかチーズのスライスも。先の割れた部分でジャガイモの芽を取ったりフォーク代わりにも使えます。
一方のズボン・クリップは足首にはめるだけ、これまた簡単です。両方とも気に入っていて、35年経った今も使用しています。