ブランコは言葉に興味があるのか、私に日本語を教えてくれと言ってきました。ブランコの部屋で、にわか日本語教室が始まりました。
私は象形文字という英語の単語を知りません(おそらくブランコも)。そこで凸凹を三つ書いて「これは日本語でヤマ、マウンテンだ」。曲線を縦に三本「これはカワ、リバー」。木立を二つ並べ「ハヤシはフォレスト」、頭に一つ加えて三つで「これはモリ、ビッグフォレスト」などなど
おもしろいと見えて、ニコニコしながら聞いていた彼は、
「俺の名前を日本語で書いてくれないか?」
「日本語には二つの表音文字があるけど、簡単なカタカナにしよう」
「うん、何でもいいから教えてくれよ」
「いい、これが…ブ」
「うん、オーケー」
「これが…ラ、これが…ン、最後に…コ。これで君の名前のブランコだ」
彼は私の修正に沿って、何度もカタカナの「ブ・ラ・ン・コ」を書き続けました。
「ブランコ、オーケー。完璧だよ」
「ちゃんと読めるか?」
「日本人の誰が見てもブランコだよ」
「そうか、サンキュー」
日本語教室(?)が終わると、仕事から戻った彼の両親と夕食となりました。紹介されたものの、私は突然のしかも訳のわからぬ外国人旅行者です。[ブランコより俺と歳が近い彼の両親、きっと息子が変なヤツを連れてきたと思っているな、参ったナ]この時やっと自らの身勝手さを感じました。
気まずい空気のなか、両親に対するブランコの説明で少し場もなごみ、ホッとしました。