[ハンガリー語(マジャル語)のアルファベットには表音用の符号が付いたものがあります。このブログでは付けていませんのでご了解ください]
「はい」「いいえ」に相当する「ダー」「ネー」を始め、日常のあいさつもユーゴスラビアとブルガリアの言葉は似ていました。もっとも、ユーゴスラビアといっても私が走ったのはセルビアだけ、正確にはセルビアとブルガリアの言葉が似ていたということでしょうか。
ユーゴスラビア側国境での係官の質問には何も答えられませんでした。その上、書面もその係官にすべてお任せ。[せめて英語で聴いてくれればいいのに]そんなことを思いながら、国境を通過しました。
その国境ではうれしい誤算が一つ。ブルガリアと違って残ったディナールがドイツマルクに再両替できたのです。さすがに西側にも開けたユーゴスラビア、貨幣の流通もオープンのようです。金額はほんの僅かでしたが、こうあって欲しいものです。
ハンガリー側の町 Roszke の国境ではギリシャのアテネで取得したビザ(有効期限半年、滞在許可30日)の確認だけで、荷物検査もなく簡単に入国できました。
両替は、 50$=2,000Ft.(フォリント) 1フォリント=約6円。
6月5日(日)、ハンガリー初日は国境から15キロほど行った街 Seged(セゲド)のユースホステルのつもりです。
セゲドはドナウ川に流れ込むティサ川沿いに開けた南ハンガリーの主要都市、人口約15万人はハンガリーでは四番目になります。街並みがスッキリしているのには訳がありました。19世紀後半、ティサ川が大氾濫を起こし街は大きな被害受けました。ヨーロッパ各国の支援のもと、数年かけて復興していくなかで整備されたのです。
お目当てのユースホステルはあいにく満室で、隣接するキャンプ場を紹介してもらいました。キャンプ場のクォリティはまずまずといったところ。ユースホステルのカードの利用で料金が半額の25フォリント(約150円)になりました。早々に飲んだハンガリーのビールは1本17フォリント、日本円にして100円弱です。[物価も安いし、ひと安心]
セゲドから首都 Budapest (ブダペスト)まで170キロほど E5号線を北上して行きます。
順調な走行中「うん? 今の何?」後輪から異音が。チェックするとフリー側のスポークが1本折れています。幸いにもすぐそばにパーキングエリアがあり、私はそこでスポークの交換に取りかかりました。
ところがボスフリーの締まりがかなりきつくて長さ15センチのモンキースパナではフリー抜きがどうにも回りません。[前は回ったのにまいったナ。大きいスパナを借りるか]スパナとタイヤを手に持ち、駐車中の若いドライバーに声をかけてみました。
「すいません。これより大きなスパナがあれば貸してもらえませんか?」
「ビッグワン? ラージサイズ? あります、ちょっと待って」
若者は車のナンバーからするとハンガリー人のようですが、英語をちゃんと理解してくれました。そして、トランクから工具箱を出すと、ツーサイズほど大きいスパナを手渡してくれました。
「これでどう?」
「たぶん大丈夫だと思う、ありがとう」
タイヤを手に持ち、フリー抜きにかませたスパナのアームの上に右足を乗せて力一杯踏み込むと、クルッ、とボスフリーが回ってくれました。