「ごめんなさい。きょうは満室なんです」
「ダメですか? 実はセゲドのユースホステルも満室で断られたんですよ」
「そうでしたか。よかったら、別の宿を紹介しますよ」
「あっ、ぜひお願いします。安いとこを」
ブダペストで再びの満室。どうやら、ハンガリーではユースホステルとは縁がないようです。国境でもらった市街図を取り出し、宿の場所を教えてもらうことにしました。
「一つはここです、Hotel Express。えーと、もう一つがこの地図からちょっと外れますけど、この辺りのホテル Vasas Udulo です」
そう言うと、ユースホステルの受付のおばさんは地図の欄外に丸印を付けてくれました。
「どっちが安いんですか?」
「それはこちらの遠いバァシャシュですけど。でもきれいな宿ですよ」
「そうですか。じゃあ、バァシャシュでしたっけ、そこにします。ここからどのぐらいかかりますかね、自転車で」
「自転車だと30分ぐらいでしょうか。よかったら、電話を入れておきますから」
「はい、お願いします」
Hotel Express は、橋を渡り、ドナウ川対岸からすぐのロケーション。一方、Vasas Udulo はブダペストで一番古い Obuda(オーブダ)地区の北に接する Romai Furudo(ローマイフルド)地区にあります。場所を示す丸印は地図の上の欄外、同じくドナウ川対岸を数キロ北へ行ったところのようです。宿のアドレスを地図に記すと、すぐ向かうことにしました。
「シア! ヨ・ナポト」
「マジャル語、じょうずですね」
「知っているのはこれだけ。きのう教えてもらったんだ」
「そうなんですか。ユースホステルから連絡がありました。日本の旅行者を一人お願いしますと」
「ええ。ユースホステルが満室で、ここを紹介してもらいました。とりあえず2泊お願いしたいのですが」
「わかりました、2泊ですね」
受付で応対してくれたのは感じのいい青年でした。Vasas Udulo は宿であると同時に地元ブダペストのスポーツクラブ・バァシャシュの施設でもあるようです。[きれいな宿っていってたけど、そういうことか。宿代も安いし正解だな]
1泊1部屋 150フォリント=約800円。
まだ日暮れまで時間があります。チェックインをすますと、自転車でブラッと街に出ることにしました。[そうだ、温泉のこと受付の彼に聞いてみよっと]国境近くのセゲドの街にも広場近くに温泉らしきものはありましたが、どうせならブダペストで気に入った温泉に入るつもりでいました。