メインストリートは一直線ですが、長すぎて突き当たりがまるで見えません。自転車を押しながら市民公園をめざして歩き始めました。
通りには壁面に彫像を施した、しゃれた建物が並んでいますが、決して派手な造りではありません。当時から街の景観に気を使っているのが感じられます。
左に三階建てのオペラ座が見えてきました。さらに進むと、オクトゴンと呼ばれる交差点です。付近にはレストランやカフェが多く、店先のテーブルでお茶や食事をする人の姿も見られます。
通りの半分を過ぎたでしょうか、あたりは落ち着いた雰囲気へと変わり、ホテルや立派な邸宅が並び始めました。どこの国の国旗でしょうか、大使館らしい建物も見えます。
自転車を押したり乗ったりしながら進むと、やっと英雄広場が見えてきました。
大きな広場の真ん中に高さ30-40mもありそうな塔がそびえています。てっぺんに立っているのが大天使ガブリエル、手に十字架を掲げているそうですが、高過ぎてよく見えません。
ガブリエル像を半円形に取り囲むように広場の奥に10数体の彫像が並んでいます。これらはハンガリーの部族を代表する英雄たちで、ここが英雄広場と呼ばれるゆえんです。
他国の観光客でしょうか、マジャル語以外の言葉が多く耳に入ってきます。[へぇー、有名な観光スポットなんだ。結構いろんな国の人が来ている]広場の両サイドに美術館があり、観光客が集まる要因のひとつになっています。
どうやら英雄広場と美術館自体が市民公園の一部のようです。広場のすぐ後ろに大きな池があり、その池を横断する中央道路が公園内を通り抜けています。
この市民公園はハンガリーの建国1千年を記念して1896年に造られた公園です。その名の通り園内は市民のための憩いの場所となっています。
公園内は車の規制がありますが、自転車は関係ありません。私は自転車で一回りしてみることにしました。
池を右に見て広場の左から公園内に入ってみました。左手すぐに動物園、しばらく右カーブを道なりに進むと〈セーチェーニ温泉〉の裏側に出ました。
温泉の他に同じ名を冠したセーチェーニ鎖橋があります。この橋の名の由来は19世紀前半にハンガリーの近代化に貢献したセーチェーニ・イシュトバーンの尽力により橋が完成したからです。温泉もそうかもしれません。
ブダペストを評して〈温泉の都〉という言葉もあります。1937(昭和12)年にブダペストで世界初の温泉学会が開催されました。会期中、世界の温泉学者が初めてブダペストを温泉の都として承認したのです。
ヨーロッパ最大のこのセーチェーニ温泉は日本のテレビでも紹介されていて私も知っていました。地元の人だけでなくヨーロッパ各国から多くの観光客が訪れることでも知られています。
内部は見えませんが、屋外にはプールのような大きな温泉が三つ並んでおり、その利用客でしょうか、何やら楽しげな声が聞こえてきました。