「グーテン・モルゲン、ママさん」
「ノブ、ボトルを全部出して。ジュースを入れてあげるから」
「えっ、ボトルですか?」
「そうよ。私の作ったジュース、おいしいと言ってたでしょ。持ってきなさい」
「はい。わかりました」
言われるままに、1リットルのポリタンクと飲み残しのワインを詰め替えるために旅の途中で購入した白いプラスチック製ボトルを手渡しました。このボトルはフックできっちり栓が締まるので、安ワインを樽から直接注いでもらうのにも重宝していました。
フランツ爺さんと朝食を終えると、
「はい、これ。ジュースとお弁当よ」
「えっ、お弁当もですか。ダンケ、ママさん」
「ノブ、そろそろ行くか? ママ、途中まで送ってくるから」
「私も下で見送ります」
ママさんと握手をしながら「アウフ・ビーダーゼン」そしてツーショットで写真を1枚。フランツ爺さんとママさんの二人のツーショットも1枚。
フランツ爺さんは数キロ先まで道案内をしてくれました。
「いいか、この先を行くと E5号線だが Linz(リンツ)までアウトバーンになっていて自転車では走れん。アウトバーンの入り口付近に右に行く道がある。その道を行け、途中からドナウ川に沿ってリンツまで行ける」
「オーケー。右ですね」
「そうだ、右だ。気を付けてな」
「いろいろとお世話になりました。ありがとうございました。さよなら、フランツさん」
かたく握手を交わし、走り出したものの振り返り、大声で
「日本に帰ったら写真を送りま~す !!」
「そうか~。楽しみにしてるよ~ッ」
フランツ爺さんのおかげでウィーンでは楽しい思い出ができました。感謝感謝です。
次の目的地は、リンツを経て Salzburg(ザルツブルク)、Innsbruck(インスブルック)と、オーストリア国内をスイスへ向けて西へと走ります。
ウィーンから90キロ、Melk(メルク)の町でドナウ川と再び出会いました。メルク周辺は Wachau(ヴァッハウ)渓谷と呼ばれ、オーストリア・ドナウの最も美しいところです。
川岸高く建っているのが〈メルク修道院〉。ウィーンから観光バスや観光船ツアーもあります。2000年に「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」が世界遺産に登録されています。
ドナウ川の景観を眺めながら10数キロ、この日は川沿いの空き地でテント泊。