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ぐるっとヨーロッパ: Austria(16) 解けた?! 紙切れの疑問

帰国して数年後、第二次大戦中に南方戦線の従軍経験があるAさんと、ある集まりで同席する機会がありました。その時Aさんから聞いた体験談が、紙切れの疑問を解くきっかけとなりました。

自転車好きの人なら南方戦線と聞くと自転車に乗って進軍した「銀輪部隊」を思い浮かべるのではないでしょうか。

悪路や密林では二分割(陸軍の特注、日本の元祖デモンタブル?)した自転車を背負いながら進みました。そこまでして、日本軍は戦域を広げていったのですが、連合軍の反撃が始まると、ご承知のように悲惨な結果になります。

お酒が入るなか、私を含む四人ほどのグループで従軍中のAさんの苦労話などを聞いていました。話が一段落したところで、私は聞いてみました。

「Aさん、よく映画やテレビドラマで将校と娼婦の恋愛劇なんかを観ますけど、実際はどうなんですか?」

Aさんは私の質問に少し驚いたようでしたが、すぐに答えてくれました。

「娼婦か。まあ、何というか、軍隊に娼婦は付き物だからな。ただ、将校はわしら兵隊が行くような店では遊ばないよ。将校専門の高級娼婦がいて、一軒家に数人で囲われていたりするようだ。その一人が相手をするんじゃないか」
「へぇー、高級娼婦ですか」
「手当てをはずめば飲食や泊まりもできたらしい。それでも普通は色恋沙汰にはならんだろう。もっとも、今のは内地でのことだ。戦地では一軒家の話は聞かなかったな。人目につかないよう店に出入りして、奥でお気に入りの娘と遊んでいたのかもしれんな。それとも、逆に女の娘の方から出向いて行ったのかもな。どうだろう、わしらはみんな<ちょんの間>だから想像がつかないよ」

私の横から声が入り、

「<ちょんの間>って、それだけっていうことですよね」
「ああ、そうだ。小さな部屋でな」

私は、さらに聞いてみました。

「お店って、娼婦がいる女郎屋っていうか娼館のことですよね。現地にもあったんですか?」
「もちろんあったよ。お店、つまり慰安所だな。わしらも利用してたよ。まあ、戦局が悪くなる前の話だが」
「兵隊さんの相手をする娼婦は、みんな公娼と聞いたことがあるんですが」
「そうだ。軍で管理しているんだから。店の入り口で受付の兵隊に金を払って、券をもらい…」

[やっぱ、チケットもらうんだ。フランツさんの紙切れもきっとそれだよ]

Aさんの話はこうでした。

娼館(慰安所)の受付にはソレ専属の下士官がいて、兵士の対応をしていたそうです。兵士は受付で軍から支払われる給料から娼婦と遊ぶためのお金を払い、代わりに券をもらいます。その券を娼婦に手渡してコトに及ぶのです。

娼婦は券を店の主人(映画やテレビドラマではたいがいやり手ババアの設定)に渡し、相手をした客の人数分の手当てをもらいます。次に、店主は券を軍に持ち込み、軍からお金を受け取るのです。

兵士の給料というか軍のお金がワンクッション置かれて娼館側へ支払われています。これが軍における公娼制度のお金の流れのようです。

Aさんは、こうも話してくれました。

娼館には日本や朝鮮からやって来た娼婦もいましたが、多くは現地の女性だったそうです。娼婦は定期的に軍医による性病検査を受け、性病の管理をきちんとしていたようです。ときどき兵士にも性病検査を行ったとのことです。

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