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ぐるっとヨーロッパ: Switzerland(12) ルツェルン

遅めの朝食をとると、出勤するブルーノと一緒に出発。時刻は昼になっていました。

「Hさん、これサンドイッチです。途中で食べてください」
「はい。Kさん、お世話になりました」
「今は予定はないけど、仕事でいずれ日本に行くと思うんだ。もちろんKの実家にも寄るつもりだけど、また会えるといいね」
「うん、楽しみだね。二人ともいろいろとありがとうございました。出発します」
「はい、気を付けて」
「グーテ ライゼ(よい旅を) !」

次に向かうのは北アフリカを一緒に走ったW君の友人Mさんの住むベルン州 Schwarzhäusern(シュヴァルツホイゼルン)の街です。街はチューリッヒから西へ80キロ近く、この時刻からでは到着が遅くなりそうです。そこで、この日の目的地は50キロほど南の街 Luzern(ルツェルン)に変更しました。

ブルーノから有名な〈瀕死のライオン像〉という観光スポットがあるから寄ったら、と勧められていたからです。ルツェルンまでは幹線道路のほかにも道が多く、ちょっと行程は長くなりますが、ノンビリと地方道を走ることにしました。

この日は街の数キロ手前、ルツェルン湖畔でテント泊となりました。対岸にそびえるのはリギ山、こちら側から遊覧船で対岸に渡ることができ、ヨーロッパで最も古い登山電車で山頂近くまで登れるそうです。さらに湖の右手に目を移すと、スイス中央部のアルプスの山々が遠くに見えました。

ルツェルン州の州都ルツェルンは、湖から注ぐロイス川を中心に古くから交通の要衝として栄えていました。ユングフラウ地方からチューリッヒへ、またイタリアからの道はむかし難所といわれたゴッタルド峠を経て、ルツェルンへとのびています。

朝、市内へ入ると、さっそく旧市街の北東、公園の一角にあるライオン像へ。まだ早いようで観光客もチラホラといった感じです。小さな池の奥、垂直な岩肌を10mほどくりぬいたところにライオン像がありました。

像の由来はブルーノに聞いていました。むかしは産業がなく細々と農業をしていた貧しい国だったスイスの男たちは、ヨーロッパ各地へ出稼ぎに出たそうです。特にハプスブルグ家に勇敢に立ち向かったスイスの兵隊はヨーロッパ各国から高い評価を得ており、傭兵としてスイスの兵隊は需要が高かったのです。

フランス革命時、800人近いスイス傭兵はフランス国王ルイ16世と王妃マリーアントワネット、その家族を守り、全員壮絶な最期をとげたました。彼ら傭兵の慰霊のためにライオン像が彫られたのです。

ライオン像はフランス王家を思わせる盾を前足でかばうようにして横たわっていました。その背中には矢か槍のようなものが刺さり、何とも形容しがたい表情をしています。観光ガイドには像を設計したのはデンマークの彫刻家、実際に彫ったのはドイツ人の石工とありました。

当時、傭兵は州単位で契約先の国へ送り出されたそうです。フランス革命時に最期をとげた傭兵はルツェルン州から派遣されたのかもしれません。

バチカン市国の衛兵は今も昔もスイス兵のみです。その理由は、永世中立国ということとともにこのような傭兵の歴史も関係しているようです。

今ではスイスは豊かな国へと変貌しています。タックスヘイブン(租税回避地)の国として評判の悪いところもありますが、その昔ヨーロッパ各地に出稼ぎに出ていた人たちがその技術を持ち帰り、スイスの産業として根付かせていったことも忘れてはいけないでしょう。

私のルツェルン観光はこのライオン像だけでした。ルツェルンからMさんの住むシュヴァルツホイゼルンの街まで北西にまだ70キロほどあり、少々先を急ぐ必要があったのです。

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