前日ジュネーブに到着したのは昼過ぎ、夕方まで市内観光でもと思い観光案内所に寄って資料をもらいました。ただ、マップ片手に湖畔をブラブラしただけで市内観光はせずじまいでした。私の気持ちはすでにアルプスに向いていたようです。
しかし、この日はあいにく朝から雨の中を次の目的地フランスのリゾート地 Chamonix(シャモニー)へ向かうことになりました。
ジュネーブから数キロでフランスとの国境です。荷物チェックはありませんが、西ヨーロッパで初めて入国審査らしきものがありました。正直に所持金5,000ドルと申告したのですが、係官は何を思ったのか、しきりに何か言っています。英語で話しても通ないようです。
こんな時はパスポートが解決してくれます。これまで訪れた国の出入国スタンプとビザが、「単なる自転車旅行者」だと説得力を持って証明してくれるのです。まあ、通行手形といったところでしょうか。
当時「フランス人はフランス語が一番美しいと思ってるからね。まずフランスじゃ英語が通じないよ」といわれてました。ある程度予想していましたが、まさか国境通過時にとは思いもしませんでした。
確かに私が旅したヨーロッパの国々のなかでスペインとフランスの2ヵ国は英語があまり通じませんでした。そもそも、両国とも学校で英語を教えていませんから無理からぬことです。
一方、スイスではフランス語圏とイタリア語圏ともにドイツ語を学校で学んでいました。ところが、スイスで用いるドイツ語とドイツ本国のドイツ語と隔たりがあるため、いっそのこと英語を、と近年徐々にシフトしているようです。
無事(?)に国境を過ぎると、モンブラン周辺を水源とするアルヴ川に出会います。アルヴ川はジュネーブ郊外でローヌ川と合流しますが、ローヌ川は青緑、アルヴ川は乳白色とまったく色が異なります。水質も違う二つの川が混ざることなく流れ行く写真が観光資料に載っていました。観光スポットにもなっているようです。
シャモニーの標高は1037m、ジュネーブとの標高差は700m弱、アルヴ川に沿ってシャモニーへと上って行くことになります。私が走っている幹線道路と並行してアウトバーンと鉄道も走っています。アウトバーンはシャモニーの手前まで、一方鉄道は再びスイスへと向かいます。
この日はシャモニーまであと20数キロ地点でテント泊。明日からアルプス山脈の谷間を走るアップ・ダウンが始まります。雨上がりを待っていたかのように雲間から雪をいただく山々が顔をのぞかせました。[よーし、いよいよだな]