分岐からグリムセル峠まであと6キロ、平均斜度7%、おそらくこの旅最後の大きな峠になるはずです。
山肌を行くつづら折りの道を上り始めて1時間半ほど、青年が教えてくれたローヌ氷河が見えてきました。
写真の中央右が氷河です。この谷がローヌ川の水源になります。200年前まで、この氷河の先端が下の村まで迫っていたことになります。
振り返って、上ってきた谷の写真を1枚。道が帯状にグニャグニャしているのがわかります。車が豆粒より小さく見えてます。
道は氷河の手前の崖で大きく左にカーブしています。[あの先が峠か? そうであってくれ、頼む]ベダルを踏む足に力が入ります。
朝ウルリヘンを出発して17キロの行程を4時間弱、最後は押し上げ、お昼過ぎにグリムセル峠に到着しました。途中休憩もありましたから、歩くよりちょっと速いかな? そんな感じです。
グリムセル峠は、この辺りで最大の水力発電用貯水湖、グリムセル湖に面しています。[何だよ、7月だというのにまだ雪だらけじゃないの]
グリムセル湖はそこそこ大きいのですが、写真でわかるように凍結した湖面にはまだギッシリと雪が残っていました。中央の山のふもとに見える建物は、本来なら湖畔に建つホテルです。
峠を吹き抜ける風はさすがに冷たく、上りきった余韻に浸る時間はありません。ウインドブレーカーを着込むと、ソコソコに峠を後にしました。グリムセル峠からはやがてベルンの街へと流れ行くアーレ川沿いを下ります。
グレッチィまで私と一緒に上ってきたローヌ川は、ジュネーブからフランス国内を流れ地中海へと注ぎます。一方、アーレ川はベルンからライン川へ、そしてドイツ国内を流れ北海へと注いでいきます。グリムセル峠は分水嶺になっているのです。
反対側の谷を数キロ下ると、日だまりにせせらぎを見つけました。[よーしッ、食器を洗って昼飯にするか]キャンプ場の水はチョロチョロ、この朝も食器洗いの行列ができていました。私は食器を洗わずに出発、途中に水場があればと思っていたのです。
コーヒーの香りに誘われたのか、柵の向こうに集まった牛たちが、昼飯の相手をしてくれました。例によって「ボロン、ボロン」山岳地域の牛は迷子になる率が高いのでしょうか、すべての牛が首にベルをぶら下げています。
アーレ川は下りきると、ひとまず湖に注ぎます。この日は Brienz(ブリエンツ)の街の手前、ブリエンツ湖畔でテント泊。どうやら、毎夜続いていた雨の心配もいらないようです。
あしたは Interlaken(インターラーケン)を経てスイス最後の観光地となるグリンデルワルトに入れそうです。