ブリエンツ湖沿いを走り、昼前にインターラーケンに到着。インターラーケンは「湖の間」という意味、もう一つのトゥーン湖との間に開けた街です。
インターラーケンからグリンデルヴァルトまで20キロ、ラウター・ブルンネンまで10数キロと近く、それらを結ぶ鉄道やバスの便もあります。その立地のよさからインターラーケンはスイスで一番のリゾート地ベルナー・オーバーラントの観光拠点となっています。
「ノーブ! ノーブッ!!」
街のスーパーで買い物を終えて出てくると、通りの向こうから私の名を呼ぶ大きな声が聞こえました。振り向くと、見覚えのあるキャンピングカーが停まっています。声の主はウルリヘンのキャンプ場で会ったドイツ人一家の長男ブルックヘッドでした。
「おーッ、何だよブルックヘッドか。こんなところでまた会うなんて驚きだよ」
「車で通りかかったら、ノブの自転車を見つけたんだ。買い物でもしてるんだろうと思って待ってたんだよ」
「そっちはグリンデルヴァルトの帰りか?」
「うん、ノブはこれから行くんだろ?」
「そうだよ。で、どうだった?」
「電車でユングフラウまで行ったけど、天気があまりよくなかった。パッと晴れてほしかったよ」
「そうか、残念だったな」
やがて、車から彼の両親と妹さんも降りてきました。家族4人、これで全員です。オヤジさんと握手しながら挨拶、
「また会いましたね。ドイツで待ってますから、ぜひ寄ってくださいね」
「はい、必ずそうさせてもらいます。もうドイツへ帰るんですか?」
「休暇もそろそろ終わりです。このあと、ベルンに寄ってからドイツへ戻るつもりです」
「ベルンですか。スイスで一番落ち着いた街だと思います。好きな街です。時間があったら橋を渡ってローゼン・ガルテン(バラ公園)の丘に上ってください。街が一望できるんです。とってもいいですよ」
「わかりました。行ってみましょう」
オヤジさんもブルックヘッドも私より英語を上手に話しました。ブルックヘッドは18才にもかかわらず初対面の時からいい意味の<タメ口>、落ち着いた口調のオヤジさんと好対照でした。
前日、キャンプ場で「グリンデルヴァルトに行くならまた会うかもな」と、互いに冗談で言ったつもりが、まさか会うとは本当に驚きでした。ブルックヘッドの家はフランクフルトの近郊、再会が楽しみです。
「持ってけよ」とブルックヘッドから手渡されたパンをバッグにしまうと、出発しました。徐々に近づく山々に、否が応でもワクワクしてきます。
グリンデルヴァルトでは、ツェルマット同じくユースホステルに泊まるつもりでいました。あらかじめ、町の手前と確認してあります。7月は観光シーズンまっただ中、早めのチェックインにこしたことはありません。
スペインやポルトガルではユースホステルと同程度の料金の宿がありましたが、物価の高いスイスではまず考えられません。どんなに安くても、共同シャワーで日本円にして3,000円以上です。貧乏旅行者が唯一泊まれるのが宿泊料金1,000円ほどのユースホステルでした。
ユースホステルは丘を少し上ったらところにあります。2泊の予定でチェックイン。
「天気がよければアイガーが見えるよ」と聞いていましたが、あいにく雲に隠れていました。