エッシェンブルクの町に、昼前には到着しました。ブルックヘッドの家があるジンマースバッハまであと2~3キロですが、この日は火曜日、ブルックヘッドとお父さんは仕事、妹さんは学校、お母さんも家にいるかどうかわかりません。しばらくエッシェンブルクの町で時間をつぶすことにしました。
ジンマースバッハは人口千人ほどの町、山間部というより周囲は緑豊かな丘陵地帯です。
時刻は4時過ぎ、人に尋ねることもなくブルックヘッドの家はすぐに見つけることができました。メインストリートから少し坂道を上がると、見覚えのあるキャンピングカーが目に入りました。
[あれッ、お父さんじゃないか?]ランニングに短パンで庭仕事をしている男性がいます。あの頭のハゲ具合(失礼)はお父さんに違いありません。
「ハロー!! ファーター(お父さん)」
一瞬驚いたお父さんでしたが、ニコニコ笑って出迎えてくれました。
「ハロー、ノブ。ようこそ我が家へ。どうぞ、どうぞ」
妹さんはすでに学校から戻っていました。やがて、ブルックヘッドが勤務先の銀行から戻ると、お母さんの手料理で夕食の時間です。
みなさんとはスイスのインターラーケン以来の再開、いろいろと話も弾みます。
お父さんの仕事は宗教関係、教会でパイプオルガンの演奏もしているそうです。ブルックヘッドもお父さんに習い演奏できるとのことです。お母さんは専業主婦ですが、妹さんともども楽器を演奏します。いわば音楽一家です。
ブルックヘッドから仕事をしているとは聞いていましたが、それにしても勤務先が銀行とは驚きでした。
ドイツの学校教育制度
寝室はブルックヘッドの部屋に簡易ベッドを用意してもらいました。二人でいろいろと話ができそうです。
「ブルックヘッドが銀行で働いてるとはなぁ。思いもしなかったよ」
「希望の学校へ行けなかったからね」
「希望って? どんな」
「銀行の仕事は好きじゃないし、農業をやりたいんだ。だから農業の専門学校さ。また試験を受けるつもりなんだ」
「へぇー。で、試験はいつなの?」
「来年だよ」
話によると、ドイツの教育制度は日本とかなり違っていました。何でも小学校卒業時(10才)に将来の進路を決めなくてはいけないそうです。
小学校の次は5年制の学校を卒業し、そのまま社会へ。6年制の学校を出て専門学校へ進み、いわゆる手に職をつける。8年制の学校を出て、大学入学資格の試験を受けてから総合大学へ進む。進路はこの三つ、途中からの進路変更は許されません。
もし大学入学資格をクリアできないと、中途半端になってしまいます。小学校卒業時にある意味将来を決めるってスゴくないですか。
どうやら、ブルックヘッドは希望する専門学校へ入れなかったので、銀行で働いているようでした。腰掛けですかね、浪人生みたいなもんです。