ブルックヘッドとはベッドに横になりながらオモシロ話をしていましたが、それだけではありません。他にもいろいろと話をしました。
大戦後、ベルリンは戦勝国アメリカ、イギリス、フランスそしてソ連により4分割され、その後西側3国とソ連で東西二つに分断されます。すると東ドイツの優秀な人材が自由を求めて西ベルリンから大量に流出するようになりました。
それを阻止するために東ドイツがベルリンの壁を築いたのが1963年のことです。壁ができてから流出は減ったものの、壁を乗り越え逃げ出そうとする若者が国境警備隊によって射殺されたというニュースが時おり日本でも流れていました。
[ベルリン以外の国境はどうなっているんだろう?]ブルックヘッドに聞いてみました。
「ここから東ドイツとの国境までそんなに遠くないけど、行ったことある?」
「遠目から何度か見たことがあるよ。国境を見に行ったんじゃないけど、オヤジさんと車で通った時にね」
「で、どうなってるの?」
「フェンスだよ。ずっと金網のフェンスが続いてるだけだよ。道路はフェンスで分断されたままだ」
「へぇー、金網のフェンスか」
「金網の向こうにはミーネが埋められている。英語だとマインというのかな」
「マイン?」
ブルックヘッドのジェスチャーで、ミーネが地雷のことだとすぐにわかりました。「ちょっと待ってくれ」そう言うと私はバッグから英和辞典を引っ張り出して日本語の地雷を引いてみると〈a land mine〉とありました。次に mine を引くと〈鉱山・地雷〉とあります。アルファベットの綴りは同じでもドイツ語と英語で発音が違うようです。