デンマーク入国前に手もとに残った西ドイツ・マルクで買いたいものがありました。それは携帯ラジオです。日本から持参した世界時間が表示できる携帯ラジオは壊れてしまい、旅の途中で他の荷物と一緒に日本へ送り返していたのです。それで、ここしばらくテントの中ではラジオのない静かな日々を過ごしていました。
西ドイツ側の国境の街、Flensburg(フレンスブルク)に到着。フレンスブルクはフィヨルド(Flensburger Förde)の奥に開けた港町です。ナチス時代には軍の施設も置かれるほどの要港として機能していました。
人口は10万に満たない街ですが、シュレースヴィヒ=ホルスタイン州の州都キール、Lübeck(リューベック)に次ぐ同州第三の都市です。
[デンマークよりも西ドイツの方がいろいろありそうだし、安いんじゃないかな? 入国前に携帯ラジオを探そう]そんな気持ちでいたのです。
ユトランド半島のこの辺りはもともとデンマーク領ということもあり、ドイツ語の他にデンマーク語の看板も目にします。
電器店に雑貨屋といろんなお店を回って携帯ラジオを探しましたが、最終的にデパートで見つけた約2,800円の携帯ラジオを購入しました。取りあえず安いヤツという選択でした。
現在、ヨーロッパでは中波によるラジオ放送が廃止される傾向にあり、短波やデジタル放送が主流になってきています。ただ、当時はまだ中波による放送が中心、キー局はどこなのかわかりませんが、英語にのラジオ放送も聞くことができました。
携帯ラジオを手に入れたことで、朝は英語のニュースと天気予報を聴いて出発できます。確か西ドイツとデンマークでは朝の8時15分から周波数1,000kHzでニュースを聴くことができたと記憶しています。
夜にはロウソクの灯りのもと、携帯ラジオから流れる音楽を聴きながら翌日のコースを考え、日記を書いたり、時に文庫本を読むという以前のスタイルに戻ることができたのです。
残った西ドイツ・マルクは大した金額にはなりませんが、デンマークのクローネに両替、取りあえずの小銭も手にしました。
こうして8月8日(月)、デンマークに入国。携帯ラジオを探すのに3時間と手間取ったこともあり、国境から走った距離はほんの7-8キロ、デンマーク初日はキャンプ場泊になりました。