スウェーデンへ出発前夜、地図を見ながら悩んでいました。［どうしょうかな。ストックホルムに行くか? それとも直接オスロに行くか?］
コペンハーゲンからストックホルム、オスロ両都市へはともに600キロ以上ありそうです。一方、ストックホルムとオスロ間は少し短く500～600キロほど、１週間もあれば十分移動できます。と言っても、いまさら時間は気にならないのですが……。
デンマークとスウェーデンの間にはバルト海と北海を繋ぐエーレスンド海峡(Øresund[デ]、Öresund[ス])があります。
ストックホルムへ向かうのであれば、コペンハーゲンの港からフェリーでスウェーデン側の港町 Malmö(マルメ)へと渡るコース取りとなります。下調べでは所要時間１時間40分ほど、空港があるコペンハーゲンの対岸 Amager(アマー)島からなら１時間もかかりません。
現在、アマー島からマルメまでは長さ16キロの橋と海底トンネルが開通しており、陸路の延長でスウェーデンへ行けるようになっています。
私にはずっと気になっていることがありました。「Ｈさん、ネパールからオスロの日本大使館宛に手紙を書きますから、必ず受け取ってくださいよ」アテネで別れたＷ君との約束です。もちろんオスロへは行くつもりでした。
そのつもりでスイスから日本へ送った手紙には「次の連絡はオスロの日本大使館宛にお願いします」と自ら大使館の住所を記していました。
スイスから手紙を出したのは１ヵ月ほど前ですが、Ｗ君と別れたのは５月の半ば、すでに３ヵ月が経過しています。とうの昔に届いているはずの手紙がやはり気になるのです。［よし、やっぱ直接オスロへ行こう］ もちろん、日本からの手紙を早く読みたいという気持ちもありました。
そうと決まれば、最短コースを行くことになります。結果、コペンハーゲンからではなく40キロほど北の港町 Helsingør(ヘルシンオア)からフェリーでスウェーデンへと渡ることにしました。
エーレスンド海峡の海沿いを北上。この朝、美術館に寄って、ルノアールの絵画を探したこともあってヘルシンオアの街に着いたのは６時を回ってからでした。
ヘルシンオアにはクロンボー(Kronborg Slot)城というお城があります。「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」有名なシェークスピア(1564-1616)の悲劇、デンマーク王子ハムレットの独白*です。
* To be or not to be, that is the question. To die to sleep, to sleep perchance to dream. Aye, there’s the rub.
その舞台となったお城がクロンボー城なのです。毎夏、城内でハムレットが上演されるそうです。このお城は世界に知れた名城だそうで、シェイクスピアのファンだけでなく、お城のファンも多く訪れる観光名所になっています。2000年に世界遺産に指定されています。
私はシェイクスピアにもお城にも興味はありませんが、せっかくなのでクロンボー城へ行ってみるつもりでした。その前にまずフェリー乗り場を確認するために港へ。［なあ～んだ。お城が見えるじゃん］何とフェリー乗り場の北側、海峡に面した岬にクロンボー城が建っているのが見えたのです。
これからお城に行っても、もう閉まっている時間です。スウェーデンへのフェリー便はまだありますが、夜に入国するのは「何だかなぁ」という気がします。［よしッ、明日の朝お城に寄ってからスウェーデンへ渡ろう］この日はフェリー乗り場で一晩明かすことにしました。
42,000km by bike 