デンマークから続くE4号線は、海を渡るとそのまま北東へと進んでいきます。そのE4号線とヘルシンボリの郊外で交差しているのがE6号線です。
スウェーデン南部、地図上には平野が広がり名もない無数の湖沼と川があります。海の向こうはユトランド半島、E6号線は海岸線を北上、時に海岸線を離れ内陸へと行く手を選ぶように進んでいきます。
同様に鉄道もオスロまで北上しており、道中幾度となく鉄道と交差することになりそうです。E6号線に並行して走る一般道があれば、もちろん交通量の少ないそちらを行くつもりです。
スウェーデン2日目、午前中から降りだした雨は、止むどころかかなり強くなってきました。本来ならそろそろ野営地を探す時間です。[どうしょう? やっぱ戻ろう。今日はユースにしょう]
先ほど通過した小さな町 Skrea(シュレア)に Vandrarhem(ヴァンドラルヘム=ユースホステル)があるのを地図で確認していました。
雨の中でのテント設営と飯の仕度ほど厄介なものはありません。どうやらこの日は降りしきる雨に心が萎えていたようです。2、3キロ戻って、この夜はユースホステルにベッドを求めることにしました。1泊30.5クローネ=約900円。
昨日の雨は上がったものの一日曇り空のもとでの走行となりました。そろそろ今宵の野営地をと考えているところに運悪くパンクです。修理を終えたもののすでに辺りは暗くなり始めていました。
[まずいな。急ごう]E6号線から脇道にそれてしばらく走り、森の中へと自転車を押し進めました。うっそうと生い茂る木々の中、適当なスペースを見つけ何とか暗くなる前にテントを張り終えました。
[よしッ、次は飯の仕度だ]その時でした。「ガサッ、ガサッ」私の後で物音がしました。
[うッ、何んだ!?]振り返ると鹿が一頭、目線を合わせて数秒。「ケェインッ、ケェインッ、ケェインッ」と短く鳴いたかと思うと慌てて森の中へと消えていったのです。
[ビックリした~ッ、鹿ってあんな風に鳴くんだ。まあ、熊や狼じゃなくてよかった]鹿が現れたのは驚きでしたが、それ以上に聞いたことのない鳴き声にビックリしました。
後日、鹿は鳴き声で仲間とコミュニケーションをとると知りました。短く高いトーンの鳴き声は「変なヤツがいるぞ」と異常を知らせる合図のようです。
つまり鹿にとって私は不審な侵入者ということです。その後は何もなかったものの再び同じ鳴き声で起こされるハメに、時刻は4時半です。今度は明るくなって見慣れないテントに鹿が驚いたようでした。