[さて、どこへ行くかな? アドベンチャー・サイクリングなら北極圏とかなんだろうけど、そりゃあないしなぁ]私はテントの中で地図を広げて考えていました。大使館の職員に「1週間したら来ますんで」と言ったものの全くのノープランでした。
物価が安ければポルトガルのように自転車を置いて列車でどこかに行くという手もあるのですが、宿代や食事代を考えるとそれはできません。
ノルウェーは国土の約70%が山岳地帯です。オスロ周辺に僅かな平野部があり耕作地は3%ほどになります。北海油田のほかには水産、海運、金属、林業などが主な産業になります。
ノルウェー産のサーモンや鯖など、日本人なら誰しもが口にしているはずです。同じ北欧でもデンマークは酪農、スウェーデンの主産業は自動車、電気、鉱工業など、北欧3国はうまく棲み分けができているのかもしれません。
[やっぱオスロの周りは山と沼っていうか湖ばっかだよな。うん何、Gol(ゴル)? ゴルって民俗博物館で見たあの木造教会のところだろ。ゴルねぇ、よ~し、ゴルに行ってみるか]こうして何のプランもなかった私はオスロの北西200キロほど、ゴルの町へ行くことにしたのです。
ゴルへ行くには一旦オスロ市内を抜けなければなりません。途中、ゴル周辺の資料をと観光案内所に寄ってみました。カウンターの女性が周辺地図を示しながら対応してくれました。
「自転車でゴルへ行くんですか? ナイスチョイスです。湖と山など7号線沿いの美しい景色に満足すると思います」
「そうですか。よかった」
「7号線と並走しているのがベルゲン・ラインという有名な鉄道です」
昨夜、地図を見て途中の Hønefoss(ホーネフォス)の街から鉄道と並走する国道7号線を行けば目的地のゴルへ着くとわかっていました。
「この細長い湖は長さ40キロあります。湖沿いを行くと次は渓谷になります。その先がゴルの町です」
「40キロもですか。渓谷沿いは登りですよね。ハード・ワークですか?」
「大丈夫です。問題ないと思います。ほかに……」
話を聞いてるうちに、偶然決めたゴル行きが確かにナイスチョイスのような気がしてきました。
次に向かったのは電話局、日本への電話代が知りたかったのです。自宅への電話ならコレクト・コールですみますが、他はそうもいきません。
1週間後に戻っても手紙が届いていないようなら友人に電話をするつもりでした。1分間 28Nkr=約920円とソコソコの金額です。