Design a site like this with WordPress.com
Get started

ぐるっとヨーロッパ: Norway(16) 行方知れずの手紙

昼過ぎに日本大使館へ。これで都合5度目、それも今日で最後になるはずです。

オスロの大使館では1日遅れの日本の新聞が読めました。巨人ファンの私としては、大使館を訪れると真っ先に新聞のスポーツ欄をチェックしていました。昨日も4.5ゲーム差ので巨人の首位を確認したばかりです。
ちなみにこの年、巨人軍は藤田監督のもと四番原選手らのメンバーでセリーグ優勝を果たしたものの日本シリーズでは3‐4で西武に破れています。

話の前にそれとなく新聞を……。
[えッ、何だ。何があったんだ]一面に泣き叫ぶ多くの女性の写真が掲載されています。ソ連の戦闘機によって領空侵犯した大韓航空機が撃墜された記事です。

ニューヨークの J.F. ケネディ空港発、ソウルの金浦空港行、乗客乗員269人全員死亡、うち日本人の犠牲者は28人。韓国人、米国人に次ぐ多さだとあります。泣き叫んでいる女性の写真は金浦空港での様子のようです。この事件は米ソ冷戦時代を象徴する出来事の一つとされています。

「こんにちは。なんか大韓航空機が撃ち落とされたようで、大変なところスイマセン」
「日本では慌ただしいようですが、こちらは普段とそれほど変わりませんよ。あれから色々と調べましたが、手紙は見つかりませんでした」
「わかりました。充分です。明日出発するつもりですので、もう結構です。色々とありがとうございました」
「もし、あとで手紙が届くことがあったらどうしましょう? Hさんの日本の自宅へ送りましょうか?」
「いや、廃棄してください。友人にもそれで了解をもらってますので」
「わかりました。それでは気を付けて旅を続けてください」
「はい。巨人優勝するといいですね」
「ええ」

実は私が大使館に出向くたびに対応してくれた職員も巨人ファンでした。何度も足を運ぶうちに顔馴染みというか色々とお喋りするようになっていました。

私の中で手紙の件はこれで一件落着しました。ただ、手紙が受け取れなかったなんて初めてのことです。途中で何かあったのか、それとも大使館に届いたものの他人の手に間違って渡ってしまったのか、疑問は残ったままでした。

翌日の出発に備えて食料など買い出しをすませてキャンプ場へ戻りました。受付のおニイちゃんが声をかけてきました。

「おーいッ、友達が来たよ」
「友達? オスロに友達なんかいないよー」
「えッへッへー」
「俺、明日出発するからなーッ」
「オッケー。わかったー」

キャンプ・サイトに戻り、晩飯の仕度を始めるとまずいことに雨が降り出しました。その時です。

「こんにちわ。良かったら、一緒に夕食をどうですか?」
「……!!」
「おにぎりをたくさん作ったので」
「ええッ、あッ、はい」

突然、日本語の女性の声にビックリしました。「ロッジで一緒に晩御飯を」と誘われたのです。聞くところによるとヨーロッパ在住のご夫婦と日本からの友人の三人でヨーロッパ各地を旅行中とのことです。[あいつのいってた友達ってこういうことか]どうやら受付のおニイちゃんが私のことを話してくれたようです。

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this:
close-alt close collapse comment ellipsis expand gallery heart lock menu next pinned previous reply search share star