遠目にも数本の運河沿いにいくつもの風車が確認できました。時刻はまだ昼前、ゆっくりと風車へと続く土手を走ってみることにしました。
オランダ語で dam ダムや dijk ダイクは堤防、kinder キンダーは幼い子供を意味します。何でも昔、大洪水の時に上流から「ゆりかご」が流れ着いたかとかでキンデルダイクという名前がこの地についたといわれています。
オランダの国土の約三割が干拓によって広げられました。干拓地は泥炭層と呼ばれる水はけの悪い地質で、今でも国土全体の4分の1が海面下です。つまり常に排水をしていないといけない状況なのです。そこで活躍したのが運河の水を汲み出す風車でした。
昔はオランダ国内に一万基以上の風車があったそうですが、今では千基足らずに減っています。ほとんどが観光用の風車として残されたものです。産業革命後、運河の水の汲み上げは蒸気ポンプに変わり、今では電動ポンプにその役目が引き継がれています。
ここキンデルダイクは数本の運河が並んでいるので、その仕組みがよくわかります。取水口から風車で水を汲み上げると一段高い隣の運河へ排出、そしてまた汲み上げて一段高い隣の運河へ。これを繰り返して運河から川へ、そして川から海へと水を流し出します。つまり運河ごとに最初から少し高低差がつけられているのです。運河の先には大雨の時に一時的に水量を調整するための貯水池も設けられています。
キンデルダイクには現在も19基の風車が残されています。数がまとまっていることで多くの観光客が訪れているのです。村にはビジターセンターがあり、ガイド付きの風車内見学ツアーも用意されていました。
夏の観光シーズンには全ての風車が回されるそうです。しかし、この時はもう9月下旬、それでも観光客が集まり始めると、数台の風車を回す準備が始まりました。
この写真は風車を回すために、管理人が羽根によじ上って布製の風受けを広げているところです。この網目状の羽根は風を受けやすいように少し反って作られています。人間と比べると羽根というか風車の大きさがよくわかります。
風車内は何階かの部屋で造られており、昔は家族で暮らしていたそうです。面白いのは羽根の停止している位置で現在の状況をご近所に報せることです。
この写真の羽根は、+(プラス)の位置で小休止、45度ずれた×(バツ)の位置だと大休止ということになります。その他、止まっている羽根の位置で祝い事や弔事を知らせていたそうです。
1997年に「キンデルダイクの風車群」は世界遺産に指定されています。
昼飯を終えると、釣竿を引っ張り出して風車の横で久々に釣りをしてみました。アムステルダムに到着以降、天気に恵まれ雨知らずでした。おそらくそんな天気に浮かれて短パン姿で釣糸を垂れたのでしょう。魚の餌はいつものようにパンとソーセージ。[う~ん?! ところで運河に魚はいるの?]ということで1時間ほど粘ってみたもののアタリは1回のみ、釣果無しでした。
最後にオランダらしい風景を一枚?! この風景、実はオランダだけではなくデンマークから西ドイツの北部にかけてよく目にしていました。
キンデルダイクから10キロほど走り、Dordrecht(ドルトレヒト)の街のユースホステルに泊まることにしました。明日にはベルギーへ入ります。