スポークを交換し終えて走り出すと今度は交差点で待ち構えていたパトカーに捕まり、何やら職務質問を受けることになりました。[何だよ。誕生日なのにツイていないな。スポーク折れの次はポリスかよ]
「……??……」
「ジュ スイ ジャポネ。ジュ ヌ コンポンパ(日本人です。言ってることがわかりません)」
会話が噛み合わないこともあり、どうにも要領を得ません。ポリスはさっきから私のパスポートを持ってパトカーと私の間を行ったり来たりしています。マイクを通して無線で本部と身元確認をしているようです。まあ、私は怪しまれているということです。
これまでも幾度かポリスと関わってきました。一番最初はロサアンゼルスからサンフランシスコへ向かう途中の市街地で道がわからなくなって「えーい、ままよ」とフリーウェイを走った時でした。後ろから来たパトカーに前を塞がれる形で停止させられたのです。降りてきたサングラスのポリスは手にショットガンを握っていました。少々ビビったのを記憶しています。
ただし、都市部のフリーウェイは自転車では走れませんが、アメリカ中央部はフリーウェイしか道がありませんから自転車で走っても問題はありません。
この時、私は「次の出口で降りる」と言ったのですが、ポリスは「ダメだ。戻って降りろ」との指示。言われた通り戻って直近の出口で降りるとパトカーが先回りして待っていました。その後アメリカでは放し飼いの犬に噛まれて警察署に駆け込んだぐらいでした。この時はポリスと一緒に現場まで戻って家人に注意したのです。
その後ヨーロッパでは何事もありませんでした。ところが北アフリカのアルジェリアでは「お巡りさんヒマなの?」と聞きたくなるほど何度もパスポートチェックを受けました。町なかを歩いていてそのまま警察署に連れていかれたこともあります。まあ、常に彼らポリスは友好的でしたが。
警察とは違いますが、チュニジアではその頃一緒に走っていたW君のパスポートに不備が見つかり、国境で一晩軟禁された上に首都チュニスの公安局へ出向くことになりました。
ユーゴスラビアでは度々ポリスのパスポートチェックを受けました。ハイウェイを降りた所でバイクのポリスが待ち構えていたこともあります。
アルジェリアもユーゴスラビアもともに社会主義国、それなりにチェックが厳しいのはやむを得ないと思っていました。ところがここはフランス、西側ヨーロッパのまさか町なかで職務質問というかパスポートチェックです。待つこと約10分、やっとポリスが戻ってきました。
「パド・プロブレム(Pas de Problème)」
「ノー・プロブレム? オーケー?」
「ウイ」
もちろん問題はありません。無事パスポートを返してもらいました。